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基地撤去求める県民の思い 日米に警鐘鳴らす元知事 '10/4/26

 米軍普天間飛行場の返還を「県民の悲願」として橋本龍太郎首相(当時)に進言し、今日に至る移設問題の端緒をつくった元沖縄県知事の大田昌秀おおた・まさひでさん(84)は25日、県民大会の舞台脇にひっそりたたずんだ。拍手と指笛に沸き立つ人波をまぶしそうに見渡し「交通が不便なこの会場に、これだけ大勢集まるのは大したもの。基地撤去を求める県民の思いがいかに強いかが分かる」と感慨深げに語った。

 知事在任中の1995年9月、米兵3人による少女暴行事件が発生。翌月開かれた県民大会で、行政の責任者として人間の尊厳を守ることができなかったと、痛恨の表情で謝罪した。

 当時から「日米安保条約が日本の平和と安定にとって大事なのであれば、沖縄を犠牲にする形ではなく、全国民が基地を負担すべきだ」と言い続けてきた。その主張は今、普天間の県内移設拒否を叫ぶ多くの県民に共有されつつある。9万人の県民大会は、その証しともなった。

 少女暴行事件の直後、米軍用地の強制使用手続きをめぐる国の機関委任事務(代理署名)を拒否。政府に翻した反旗は、やがて法改正などで押さえ込まれ、普天間も不本意な県内移設が具体化していくが、一連の言動が県民に与えた影響は大きかった。

 日米両国での長い学究生活と、知事として米政府当局者と接触を重ねた経験から「普天間移設の日米合意が履行されなければ、日米同盟が危機に陥るという論があるが、あり得ない話だと考えている」と断言する。

 むしろ、政権内部で依然くすぶる県内移設論について「県民の怒りは爆発寸前だ。いま対応を誤れば、基地の全撤去運動につながるだろう」と指摘。「県内移設こそ日米同盟に危機をもたらし、安保条約そのものが根底から崩れる恐れが多分にあることを、日米両政府は理解すべきだ」と警鐘を鳴らす。

 「本土の捨て石」とされた沖縄戦に学徒兵として動員され、死線をさまよって以来、沖縄人が置かれた差別状況を鋭く自覚。27年間の米軍統治を経て、本土復帰から38年たった今も変わらぬ状況にいら立つ。「日米安保条約のどこにも『沖縄に基地を置く』とは書かれてはいない」




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