廃線車両の運転席や運賃箱がそのまま残っている室内=宮崎県日之影町、大久保忠夫撮影
簡易宿泊施設「TR列車の宿」の完成を祝って行われた記念式典
台風災害を受けるなどして一昨年12月に廃線となった宮崎県の高千穂鉄道(TR)の車両2両が、同県日之影町の旧日之影温泉駅で簡易宿泊施設「TR列車の宿」に生まれ変わった。外観や運転席、運賃箱は当時のままで、鉄道ファン垂涎(すいぜん)の宿になりそうだ。
同駅は温泉を備えた駅舎があることで人気だったが、廃線後は人気(ひとけ)がなく、車両も放置されたままだった。このため、町が検討委員会で再利用について協議し、線路を利用した2.2キロの森林セラピーロードや天然の足湯も構内などに設けて、「癒やし」を売りにした宿に変身させた。
「TR列車の宿」は鉄道資産を利用した活性化策の軸となる取り組みだ。車両は高千穂鉄道から無償で譲り受け、宿は、町内の旅館でつくる「ひのかげ列車の宿有限責任事業組合」が委託を受けて運営する。足湯などと合わせ、町が県の補助金など計1億円で整備した。1、2、4人部屋が各2室あり、1日に14人が宿泊できる。
22日にあった完成記念式典では「一度は泊まってみたい」「癒やしの町にうってつけ」との言葉が出た。昼過ぎに予約の受け付けを始めると、電話が鳴り続け、同日中にゴールデンウイーク中の宿泊はほぼ埋まった。担当者は「断るのが大変」とうれしい悲鳴を上げている。予約や問い合わせは同組合(0982・87・2600)へ。