※この記事は日経エンタテインメント!(5月号)の記事を転載したものです。購入はこちら

 2011年の地デジ移行など、アナログからデジタルへの大変動期。遅れをとってきた「ラジオ」がネット同時放送へと踏み出した。

 3月15日、在京、在阪の民放ラジオ13局が、ラジオの地上波をリアルタイムでネット配信するサイマル(同時)放送を開始した。IPサイマルラジオ協議会による配信サイト「radiko.jp(ラジコ)」にアクセスすれば、音楽やCMも含めてほぼすべての番組が聴けるというもの。昨年まで関西で実施した試験に続く8月末までの“実用化試験配信”だが、在京7局と在阪6局が参加している。

 大々的な告知はなかったにもかかわらず放送初日はサーバが一時ダウンするほど。プロジェクトメンバーである電通ラジオ局開発推進部の宮澤由毅部長は「予想以上の反響」と驚く。スタート初日の延べ聴取人数は、104万人強に上ったという。

 サイマル化の狙いは、「聴取環境を復活させリスナーの数を増やすことが第一義」(宮澤氏、以下同)。都心のビルの高層化などによって起こる電波障害や、チューナーのない家庭の増加によって、ラジオのリスナーは減少傾向。これに伴い、広告費も91年の2400億円をピークに年々低下、昨年は1370億円にとどまった。危機意識を持つ各局がまとまり、今回の実験に至ったというわけだ。

関東エリア「radiko.jp(ラジコ)」のホーム画面。表示されている放送局をクリックす るとプレーヤーが起動し聴取できる。http://radiko.jp(画像クリックで拡大)

IPサイマルラジオ実用化までの流れ
2007 4 IPラジオ研究協議会を在阪6局と電通にて発足
10 実験の概要を対外発表
2008 4 配信実験開始
10 在阪6局と合同で1000人を対象としたモニターアンケート実施
2009 8 在京7局にIPサイマルキャストラジオの提案
12/15 IPサイマルラジオ協議会発足
2010 3/15 大手民放13社、IPラジオサイマル放送開始。8月末まで
8/31
9 実用化へ