米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設に反対する県民大会に9万人が結集し、「5月末決着」という鳩山由紀夫首相の公約は事実上、破綻(はたん)した。政府は、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)を移設先とする現行計画の修正も模索し始めたが、基地のたらい回しを拒否する県民感情を一段と刺激しかねない。期限内に決着できず、首相の進退論に発展する可能性が強まった。
「まだ(詳しい様子が)分からないから」。25日、記者団に県民大会の感想を問われた首相は言葉少なにこう答えた。当初は現行計画を容認する姿勢だった仲井真弘多知事も県民大会に出席し、「最低でも県外」と表明していた首相に対し、「公約通りの解決」を求めたインパクトは大きい。防衛省幹部は「民意を覆すのは不可能だ」と頭を抱えた。
「県外移設」の公約に近づけるため、政府は鹿児島県・徳之島へのヘリ部隊の一部移転を検討、地元にも打診した。しかし、徳之島でも1万5000人の反対集会が開かれるなど、地元の同意を得るのは困難な状況だ。
こうした中、岡田克也外相が現行計画の修正も視野に米側と協議していたことが判明。シュワブ沿岸部を埋め立てる現行計画を見直し、環境への負荷の少ない「くい打ち桟橋方式」などが話し合われたとみられる。しかし、泥縄の印象は否めず、解決への糸口は依然見えない。
政権内では、期限内の決着先延ばしを図る動きもあった。先月下旬、県民大会に参加するかどうか悩んでいた仲井真知事に対し、北沢俊美防衛相が「おやりになればいい」と出席を促したのは、「無理筋の案」をまとめるよりも、沖縄の反対を理由に仕切り直しとし、普天間を継続使用しながら再検討した方がいいとの判断があったためだ。
地元や米国との合意が絶望的な中、「5月末までに日本側の考え方を出せばいい」(民主党幹部)と「決着」の定義をぼかし、首相の責任回避を図ろうとする動きもある。
ただ、首相は23日の参院本会議で、普天間移設に「職を賭す覚悟」で臨むと表明、自らハードルを引き上げた。強気の発言が「空手形」に終わった場合に責任を問われるのは必至。与党内でも「解決できなければ支持率はさらに落ちる。首相は辞めざるを得ない」(民主党中堅)との見方が広がっている。(2010/04/25-20:28)