|
|
きょうの社説 2010年4月25日
◎政権公約に新幹線 具体的な提案を望みたい
今夏の参院選に向け、民主、自民党内でマニフェスト(政権公約)に北陸など整備新幹
線の建設促進を盛り込もうとする動きが活発化している。それぞれの党の沿線国会議員らでつくる議連が、その動きの中心となっている。「新幹線がこれからどうなるのか」という点は、石川、富山など沿線の有権者が、投票先を決める際の判断材料の一つになると思われ、二大政党がスタンスを明確にして選挙戦に臨むことになれば、歓迎である。ただ、北陸新幹線長野−金沢など既着工区間については、自公政権時代に始まった工事 を現政権も踏襲しており、民主、自民党の考え方にそれほど大きな違いがあるとは思えない。両党の差が出るとすれば、金沢以西など未着工区間の取り扱いである。 国交省は政務三役による検討会議で未着工区間の建設方針を決めるとしているが、着工 の是非や完成時期を左右する財源に関する本格的な話し合いも、まだ始まっていないという。着工の条件の一つである費用対効果を検証するにあたっては、高速道路料金をめぐる議論も見極める必要があるとの指摘もあり、参院選までに結論を出すのは容易ではなさそうだ。 民主党には、検討会議の背中を押す意味でも、マニフェストにより具体的な方針を記載 することを期待したい。そのためには、議連でも、財源などについてもっと突っ込んだ話し合いを重ねなければなるまい。前向きな姿勢を打ち出すにしても、「未着工区間もちゃんと建設します。ただし、詳しいところは国交省で検討中です」といった内容では、待たされ続けている沿線の有権者は物足りなさを覚えるだろう。 これは、自民党にも言えることである。野党時代の民主党とは違い、自民党には与党と して新幹線建設を引っ張ってきた経験の蓄積があるはずである。政権交代に直結しない参院選とはいえ、「民主党より頑張ります」という程度では、たいした評価も得られないに違いない。実現可能性も考慮した提案をマニフェストに明記するために、議連などがさらに努力してもらいたい。
◎日仏交流会議 金沢の文化を磨く刺激に
来月に金沢市内で開催される第2回日仏自治体交流会議で、金沢など日仏の自治体トッ
プが「文化」などをテーマに議論を交わす。ユネスコの「クラフト創造都市」、国の「歴史都市」に認定された開催地・金沢にとって、文化や歴史を生かした都市づくりを進めるフランスの都市から学ぶ点は多く、文化に磨きをかけて地域活性化につなげる新たな方策を探りたい。交流会議に合わせて、市内の工房を巡る「クラフト・ツーリズム」なども実施されるこ とになっており、参加者には金沢の魅力を大いに味わってもらいたい。受け入れ側も、それらの刺激によって、金沢のよさを再認識し、今後の街づくりの方向性を見いだすこともあるだろう。会議の前後は「ラ・フォル・ジュルネ金沢」や「フランス芸術週間」など、フランス関連のイベントが続く。より多くの市民がイベントを楽しみ、街ぐるみで来客をもてなすことで幅広い交流の芽を育て、フランスの金沢ファンを増やしたい。 今回の交流会議は、一昨年にナンシー市で開かれた第1回会議を上回る44自治体が参 加し、金沢の知名度を国際的に高める格好の機会といえる。景観対策や音楽などの芸術で町を活性化させるフランスの都市の取り組みに注目し、文化の力による地域活性化を探る意義ある議論と提言がなされることを望む。 金沢市は交流会議に参加する姉妹都市のナンシー市と「ものづくり交流協定」(仮称) を締結する方針である。両市の学生、職人などの交流促進に努める内容となる見通しで、都市間交流がより強まることになる。さらに会議を通じて、自治体交流の新たなモデルと国際的なネットワークの広がりが生まれてほしい。交流の拡大は今後の観光客の誘致や伝統工芸品などの販路拡大も期待できる。 会議の参加者を対象に、金沢の工芸の魅力を発信する「クラフト・ツーリズム」は、文 化を地域振興に生かす実践といえる。海外観光客や国際会議誘致への活用に向けて、今回の試みはモデルルートづくりの参考になるだろう。
|