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ここから本文エリア 「音の里」に響け水琴窟2010年04月22日
かめの中にしたたり落ちる水滴が共鳴して「ぽろん、ころん」と妙(たえ)なる調べを生み出す「水琴窟(すい・きん・くつ)」。「音の里」を目指し、活動を続けている庄原市口和町のワークショップ水琴窟部会が、口和郷土資料館の中庭に完成させた。メンバーらは「心洗われるような優しい音をぜひ聴いてほしい」と、一般公開へ向けて最後の仕上げを急いでいる。(長尾大生) 部会のメンバーは資料館関係者、農業、会社員などの地元有志。21日には5人が集まり、きれいで大きな音が聞こえるように、水の落とし方をいろいろ試したり、耳につけて聞く竹の筒の太さを変えたりした。メンバーからは「さっきの方がいい」「随分と音が聞こえやすくなった」などの意見が出て、それをもとに細部を微調整した。 口和町は、庄原市が推進する地域の特性を生かした街づくりとして「音の里くちわ」を掲げる。古い蓄音機やレコードを多数所有する郷土資料館を中心に、音楽があふれる町を目指し、昨年5月にワークショップが発足。その中で水琴窟部会も活動を始めた。 水琴窟についての知識はゼロ。「まずは音を聞こう」と岡山市の神社と岡山県美作市の個人宅を訪ねた。ワークショップ全体の委員長でもある三吉龍次(み・よし・りゅう・じ)さん(67)は「なぜかなつかしい、癒やされる音。ぜひ、自分たちで作りたいと思った」と振り返る。 インターネットや視察で得た知識を元に、大小二つのかめで試した。音は鳴ったが、さらにいい音を求めた。水琴窟用のかめを専門に作る製陶所が愛知県常滑市にあることを知り、直径50センチ、高さ60センチの素焼きのかめを買い求めた。設置の仕方、周りの石の置き方など、業者と図面を何度もやりとりしながら、約1カ月かけて作業を終えた。 一番いい音が出るのは、水を落とす高さが45〜50センチということも探りあてた。「ちょっとしたことで音が変わる。おもしろさにはまった」と部会長の平川公司(ひろ・し)さん(65)。 ひしゃくで水を落とし、竹の筒で直接音を聞く方法と、かめにマイクを設置しスピーカーを通して聞く2通りの聴き方を準備した。資料館へ行けばすでに聞くことができるが、5月にもイベントを開き、正式に公開する予定だ。 ◎水琴窟 底に小さな穴を開けた素焼きのかめを逆さにして埋め、穴から落ちる水滴の着水音が、かめの中で反響する音を楽しむ仕掛け(図)。江戸時代から始まった日本古来の造園技術。琴に似た音を響かせることからこの名がついたとも言われる。
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