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夜間中学、様変わり 生徒の大半、今や外国籍 「学びたい」情熱不変 神奈川

2010年4月23日

写真授業の調理実習でカレーをつくる夜間学級の生徒たち=横浜市中区の市立仲尾台中学写真国語の授業で、日本語の会話を練習する夜間学級の生徒たち=横浜市中区の市立仲尾台中学

 さまざまな事情で義務教育を受けられなかった人たちが学ぶ中学の夜間学級。県内では横浜市に5カ所、川崎市に1カ所あるが、今や大半の生徒は外国籍と様変わりしつつある。それでも「学びたい」という生徒の情熱は変わらない。横浜市では今春、ようやく教科書の無償配布が実現したが、取り組みの遅れを指摘する声もある。

 「相手の目を見て、棒読みにならないように」

 JR山手駅に近い横浜市中区の市立仲尾台中学。19日、夜間学級の国語の授業で松本竹生教諭(36)が生徒たちにゆっくりと大きな声で語りかけた。この日出席した3人はベトナムと中国、フィリピン出身で、日本語は片言。それでも何度も声を出して会話の練習を繰り返した。

 2限は調理実習。松下伊織教諭(32)が「自宅でもやらされているから」と照れ笑いしながら、包丁で器用にジャガイモの皮むきを教えた。教室に笑顔があふれていた。

 今春、5人が卒業、3人が入学して在籍は6人に。このうち2人は日本国籍だが、海外出身で日本語はほとんど話せないという。9人の教員が交代で教えている。

 学級最年長のチー・ニャット・スーンさん(35)はベトナム人で8年前に来日。0〜6歳の3人の子どもを持つ母親だが、「どうしても高校に通いたい」と夜間学級に入学した。夢は保育士。高校卒業後は専門学校に進みたいという。夕方、夫に3人の子どもを任せ、学校に通っている。

 授業は毎日、午後5時半から3時間。主要5教科のほか体育や家庭科もある。

 市教育委員会によると、入学希望の外国籍の生徒の大半が日本語を話せないという。市内では3月時点で37人が在籍していたが、34人は外国籍や海外出身の生徒だったという。

 仲尾台中の浅井豊校長は「日本人では今春、70代の女性が卒業したのが珍しいぐらい。意欲的に勉強し、全日制や定時制高校に進む生徒も多い。先生たちも朝から夜まで大変だが、工夫を凝らした授業で頑張っています」と話していた。

 ●教科書ようやく無償配布 横浜市、急きょ今春から

 そんな夜間学級だが、横浜市ではこれまで、教科書が配られていなかったことが明らかになった。市議会で「義務教育なのにおかしい」と指摘され、今春から急きょ配布が決まった。関係者からは「横浜は他都市に比べて取り組みが消極的」という批判の声も出ている。

 同市の夜間学級は仲尾台のほか浦島丘、蒔田、鶴見、西の5中学。1950年に最初に設けられたが、市教委が把握する限り、教科書が配られたことはなかった。各生徒の学習の習得状況に応じて担当教諭が学習プリントを作り、配ってきたという。

 4月上旬の市議会。加納重雄市議が「理解できる、できないは別として教科書を無償配布しないのは違法ではないか。配っていないのは全国でも横浜ぐらいだ」と尋ねた。

 山田巧教育長は「生徒の大半は外国籍で、教科書を渡しても日本語のレベルに違いがありすぎる」と説明したが、最終的に「配る方向で調整する」と答弁した。

 これまで市教委はホームページでも夜間学級について触れていなかったが、急きょ紹介することも決まった。

 横浜の場合、複式学級で1校の定員は8人。昼間の中学教員が兼務して教えている。一方、川崎市では西中原中1校で22人が在籍。東京都内には8校あり、約220人(2009年5月)が通う。両自治体とも横浜と違い、教員は専任。東京では日本語を中心に勉強する日本語学級も開かれ、給食もある。

 鶴見中の夜間学級で15年前からボランティアを続ける三階泰子さんは「横浜市教委は『生徒が教科書を読めない』というが、外国籍の生徒が増える前も教科書は配られていない。配ってほしいと市に要望してきたが、『対象になっていない』と断られてきた。横浜も少しずつ環境を整えてほしい」と話している。(佐藤善一)

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