【コラム】ファン・ジャンヨプ先生の言葉は正しかった(下)

 ファン先生は「北朝鮮の悪行にわれわれ(韓国)が報復し、北朝鮮がそれに報復で応じることで、韓半島(朝鮮半島)をパレスチナとイスラエルのような悲惨な戦場に変え、韓国経済を揺るがし、国論を分裂させることが金正日の狙いだ」と指摘した。

 中国が北朝鮮の正体を看過できないよう、「天安」事故の原因解明調査に中国も参加させ、北朝鮮の手足を封じた上で、北朝鮮の再挑発に対しては、「本当の脅威とは何なのかを見せつけられるように無慈悲に膺懲(ようちょう)すべきだ」というのがファン先生の意見だ。87歳の老躯(ろうく)にむち打って、金正日政権の打倒と2400万人の北朝鮮同胞の救出に全生涯をかけたファン先生の言葉だけに重みがある。ファン先生が金正日とその子分たちの脳裏にある計算を見抜いていることに異論はない。問題は、韓国とその国民が今回の事件を機にこれまでの安逸から脱し、北朝鮮の正体を見破り、それに基づき「金正日なき統一」に向けた一歩を踏み出せるかということだ。韓国が大きく変わってこそ、何も変わることのない金正日に丸め込まれることもなくなる。

 昔、地中海の都市国家シラクサの王、ディオニュシオス1世は「偉大な王」とこびへつらう側近ダモクレスに対し、「玉座の上の天井を見上げよ」と指示した。玉座の真上には、細い馬の毛一本でつるされた剣があった。王が常に命の危険にさらされていることを部下に悟らせたこの逸話は「ダモクレスの剣」として知られる。韓国とその国民は「世界10位の経済大国」「南北軍事力の圧倒的格差」という過信から目覚め、ダモクレスの剣のように常にわれわれの頭上を狙う金正日の正体を正視できるのか。ファン先生はわれわれの動向を見守っている。

姜天錫(カン・チョンソク)主筆

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る