哨戒艦沈没:大青海戦後、北が強硬路線に急旋回(下)
■強硬モードは大青海戦後から
北朝鮮が「ファン・ジャンヨプを暗殺せよ」という指令を下したのも、大青海戦が起こった時期と推測されている。検察関係者は、「実行犯が指令を受けた時期は11月初めか中旬ごろだ」と語る。対南工作を総括する金英徹(キム・ヨンチョル)偵察総局長は11月21日、実行犯らに豪華な食事を振る舞い、「ファン・ジャンヨプの首を取ってこい」と命令した。
そして、北朝鮮は11月30日に突然、デノミネーション(通貨単位の切り下げ)を断行した。韓国の情報当局は、北朝鮮でのデノミの動きについては感知していたが、厳しい冬を目前に控えた寒い時期に、突然強行するとは思ってもいなかったという。高麗大学のチョ・ヨンギ教授は、「デノミによって北朝鮮国内の“市場勢力”の資金を回収し、経済難の解決を目指したものだ。この動きからすると、韓国への融和策を通じて支援を引き出すことを諦めていたのではないか」という見方を示した。
さらに12月からは、北朝鮮軍部による軍事圧力がより本格化した。北朝鮮海軍司令部は12月21日の声明で、「朝鮮人民軍の平時海上射撃区域をNLL南方にまで拡張する」と一方的に宣言した。また今年1月15日には、最高権力機関である国防委員会が、「対南報復聖戦」を宣言し、1月27日には西海上で韓国に向けて海岸砲を発射し、韓半島(朝鮮半島)の緊張を一気に高めようと試みた。
■北朝鮮による挑発の中、首脳会談を考えていた韓国政府
ところが韓国政府は当時、北朝鮮がこれらの挑発を繰り返す中でも、それほど深刻には受け止めていなかった。政府部内では「体制の引き締めのため」「米国の関心を引くのが狙い」などといった判断を下していたのだ。統一部のある幹部は記者との電話インタビューで、「あまり強硬な記事を書くと、国民の不安をあおろうとする北朝鮮の狙い通りになる」と暗に注文をつけていた。
このような状況の中で、首脳会談の開催に向けた計画は推進された。李明博(イ・ミョンバク)大統領は1月28日(現地時間)、英国BBCとのインタビューで、「金正日(キム・ジョンイル)総書記とは年内に会えそうだ」と語っていた。韓国政府は今年に入ってから複数の経路を通じ、北朝鮮に対して首脳会談の開催を要請するメッセージを送っていた。デノミに失敗した来た朝鮮が、これに応じるものと予想していたのだ。しかし韓国政府筋は当時の状況について、「北朝鮮から返される信号は一貫してすっきりしないものだった」と振り返る。今年2-3月には金剛山観光の再開と開城工業団地の活性化に向けた実務者協議が行われたが、北朝鮮は韓国側からの要求を一切受け入れないだけでなく、逆に脅迫の度合いを高めてきた。韓国政府の当局者は、「要するに北朝鮮の態度を正確に読み取れなかったということだ」と語る。
アン・ヨンヒョン記者
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