【社説】対北食糧支援、ビル・ゲイツ氏も否定的

 マイクロソフトのビル・ゲイツ会長は22日、北朝鮮の食糧難を解決するため、「主要20カ国・地域(G20)農業・食糧安全保障基金」によって北朝鮮を支援する問題について、「北朝鮮が信用し得る農業増進計画書を提出できるか、外部支援資金をきちんと運営できるか分からない」と述べ、否定的な見解を示した。この基金は、韓国などG20の参加国と「ビル・メリンダ・ゲイツ財団」が8億8000万ドル(約826億円)を拠出、低開発国の食糧問題解決のために創設された。

 金正日(キム・ジョンイル)総書記は今年初め、「次にわたしがすべきことは、わが人民に白米を思う存分食べさせることだ」と述べたと報じられた。この「自白」が逆に物語るように、今年の北朝鮮の食糧難はかなり深刻とみられる。韓国当局は今年、北朝鮮の食糧不足分は全住民の3カ月分の食糧に相当する約120万トンに達すると推定した。

 しかし、北朝鮮は対策を十分に取れないのが実情だ。ここ数年、ミサイル発射や核実験によって韓国や国際社会の支援がほぼ中断された上に、無理な貨幣改革の後遺症で内部の穀物市場までまひしたためだ。北朝鮮の人権を扱う市民団体は、「新義州だけでも今年2月現在、300人余りが飢えで死んだ」「最近、平壌の高層アパートでも毎日のように、飢え死にする高齢者が数十人発生している」と話している。1990年代半ばに餓死者が100万人単位で発生していたときも手放さなかった軍用米を北朝鮮が放出したのを見ると、食糧事情がどれだけ厳しいのか見当が付く。

 金総書記は、苦痛に耐えられず毎年数千人が死を覚悟して脱北の準備をしているにもかかわらず、死んだ父親の誕生日に打ち上げた花火には540万ドル(約5億700万円)を使った。コメ9000トン余りを買えるほどの金額だ。金総書記が昨年、ミサイル発射や核実験の火遊びに使った金だけでも約7億ドル(約657億円)だ。この金があれば、トウモロコシ約200万トンが買える。これが「人民と政権は別」という圧政体制を取る朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の実態だ。

 北朝鮮は23日、「天安」沈没問題が解決していないにもかかわらず、離散家族面会所など金剛山地区内にある韓国政府・公企業所有不動産の没収を強行した。北朝鮮がこうして対南強硬措置の水位を上げれば上げるほど、韓国側の北朝鮮に対する温情はそれだけ失われるだけだ。野党は昨年9月、国会に「対北朝鮮コメ支援要求決議案」を提出したが、先日決議案が国会外交委員会に上程されると、野党も決議案の保留に同意せざるを得なかった。

 金総書記が少なくとも人民を飢え死にさせないために、大韓民国政府と国際社会が効率的かつバランスあるアメとムチの手段を実施するためにはどうすればよいか、真剣に考えるべきだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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