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長崎新幹線 鹿島市長「再考を」
2010年04月24日
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整備新幹線問題調整会議に臨む鹿島市の桑原允彦市長=国土交通省 |
九州新幹線西九州(長崎)ルートの着工に異議を唱え続けている佐賀県鹿島市の桑原允彦市長が23日、国土交通省であった政府の整備新幹線問題調整会議に出席した。来月での退任が決まっている桑原市長は、国が示した費用対効果に疑問を呈し、佐賀、長崎両県民への世論調査でも建設反対が多いことを紹介したうえで、「公共事業はその地域の人に歓迎され、喜ばれるものでなければいけない」と既着工区間を含めた建設の再考を求めた。(岩田正洋)
調整会議は、整備新幹線の未着工区間の新規着工の是非や着工順位などを検討するため、昨年12月にスタート。7回目のこの日、桑原市長のほか鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長らが出席し、三日月大造国土交通政務官や、財務省、総務省の幹部の前で意見を述べた。
桑原市長はまず、鹿島市を通る並行在来線のJR長崎線(肥前山口―諫早間)について、地元市町の同意なしに佐賀、長崎両県とJR九州の3者合意で運行案を決め、長崎ルートの着工認可に至った経緯を紹介。改めて「地方自治、地域主権を完全に否定している」と批判した。
長崎ルートに導入予定のフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)に、桑原市長は「巨額の費用を伴う新幹線整備の代わりに在来線と新幹線を乗り換えなしで運行できるFGTを開発し、地方の利便性や活性化を図るのが目的だったはず」と指摘。重量が重くカーブの多い長崎線に導入できないとの佐賀県の説明に対し、「この問題を解決すれば長崎線にもFGTが導入可能になり、巨額な費用を使ってまで長崎ルートをつくる必要はない」とした。
また、国が1・7〜1・8倍と試算した既着工区間の費用対効果についても、全運行本数が東京まで行けることを前提にした試算のため、桑原市長は「新大阪までの運行も厳しい状況で、長崎ルートの費用対効果は1・1に極めて近づいている」とした。
このほか、肥前山口―武雄温泉間の複線化に伴う費用、鹿児島ルートで建設費が当初見込みより大きく膨らんだことに加え、将来人口予測や高速道路料金の引き下げなどが費用対効果を低下させるとして、再度、綿密に試算するよう求めた。
桑原市長は時短効果について、新大阪―長崎間ではむしろ遅くなると指摘したほか、福岡県の都市部に人が流出するストロー現象が生じ、長崎ルート建設は「地元にとってむしろ逆効果」とした。
佐賀、長崎両県の各種世論調査で建設反対の県民が多いことを紹介。「私は来月、5期20年務めた市長を引退する。最後の力を振り絞ってお願いする。新幹線ありきではなく、民主党政権らしさを発揮し、既着工区間も含め再考してほしい」と締めくくった。
その後、国交省の佐々木良幹線鉄道課長が「国交省としては、円満に調整したという報告を佐賀県から受け、認可を判断した」と指摘。「着工が決まったから、反対の旗を降ろすと言ったが、我々は最後まで同意していない」とする桑原市長と激しくやり取りする場面もあった。
■九州新幹線西九州(長崎)ルートを巡る経緯
1973年12月 全国新幹線鉄道整備法に基づき長崎ルート整備計画決定
92年8月 鹿島市など1市7町により「JR長崎本線存続期成会」発足
96年5月 存続期成会が並行在来線のJRからの経営分離に反対決議
同年11月 JR九州が肥前山口―諫早の経営分離を要望
2002年1月 鉄建公団(現鉄道・運輸機構)が武雄温泉―長崎の工事実施計画を認可申請
04年12月 沿線4町、古川康・佐賀県知事が相次いで経営分離に同意。政府・与党が武雄温泉―諫早の条件付き着工を了承
06年4月 着工反対を訴えた桑原允彦・鹿島市長が5選
07年12月 長崎線の運行をJR九州が20年間継続し、その間の維持管理費などを佐賀・長崎両県が負担する「3者合意」成立。新幹線着工への地元同意が不要に
08年3月 国交省が着工認可。翌4月に嬉野市で起工式
09年3月 期成会解散
同年8月30日 衆院選で民主党が大勝
同年10月 前原誠司国土交通相が会見で、既着工区間を含む長崎ルートの整備方針見直しを表明
同年12月 政府の整備新幹線問題調整会議発足
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