【北京・浦松丈二】中国で昨年4月に麻薬密輸罪で死刑判決が確定した赤野光信死刑囚(65)の刑を近く執行すると中国政府が、日本政府に通告した。中国は昨年12月、英国政府の反発を押し切って同じ罪で英国人の死刑を執行している。外国人でも厳罰に処すという対応の背景には、覚せい剤の広がりに対する中国政府の強い危機感がある。だが、1972年の国交正常化以来初となる日本人の死刑が執行されれば、日中関係にも影響が出る可能性がありそうだ。
中国外務省の秦剛副報道局長は30日の定例会見で「麻薬犯罪は国際社会が認める重大犯罪だ。各国とも法に基づき厳しく取り締まっており、赤野光信(死刑囚)の死刑執行について昨日(29日)日本側に通告した」と説明した。
日本政府当局者によると、4月5日にも死刑が執行される可能性がある。
中国では、改革開放による競争原理導入や経済成長の陰でストレスに悩む人々が増えたことなどに伴って、若年層や農村部にまで覚せい剤が広がり、大きな社会問題となっている。このため刑法では、覚せい剤密輸は、50グラム以上で「懲役15年か無期懲役、または死刑」という重罪。1キロ以上は、原則として死刑になっている。
同当局者によると、赤野死刑囚は約2・5キロの覚せい剤を日本に密輸しようとして拘束された。日本人では、赤野死刑囚以外にも3人の死刑が確定。1人が有期刑で服役中で、未決拘置中の被告も8人いる。
昨年12月には、新疆ウイグル自治区ウルムチで、同罪によって死刑判決が確定していた英国人アクマル・シャイフ死刑囚(53)の刑が執行され、ブラウン英首相が中国の司法手続きに不備があるなどとして「最大限に強い言葉で非難する」と反発していた。
毎日新聞 2010年3月31日 東京朝刊