有権解釈権と内閣法制局
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作成日時 : 2006/06/24 00:57
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とあるニュースに関する有権解釈権について調べていたら、面白い論文を見つけたのでメモ。
ニュースとはこれ。
「外務省背任事件、元局長が佐藤被告を擁護 高裁で証言」(朝日) 鈴木宗男衆院議員と外務省を巡る一連の事件で、当時欧亜局長だった東郷和彦氏(61)が21日、東京高裁で開かれた元主任分析官、佐藤優被告(46)=休職中=の公判に弁護側証人として出廷した。佐藤被告はイスラエルのロシア専門家の旅費を国際機関から不正に支出させたとして背任罪などに問われているが、東郷氏は「担当部局の決裁を受けており違法性はない」と証言した。
(中略)
問題となった支出は国際協定上、許されないとする検察側の主張について「協定の解釈権限をもつ条約局が実施していいと判断しており、違法性はない」と強調した。
「外務省報道官会見記録」(問)今日、佐藤優被告の裁判で、東郷元欧ア局長が決裁が組織的なものだったなどと証言されていますが、それについて外務省としての受け止めを聞かせて頂けますか。
(報道官)これは係争中のものですから、我々がコメントすることが適当かどうか知りませんが、我々としては、この裁判に対して、十分関心を持って見守っていくということです。
(問)外務省幹部の方が弁護側の証人に立ったということ自体はどうですか。
(報道官)この方は今は直接の外務省の職員ではありませんので、我々としてコメントすることは差し控えたいと考えています。
(問)組織的な決裁ではなかったという認識なんですよね、外務省としては。
(報道官)この問題については、我々としては組織的なものではないという認識です。
(問)佐藤被告が独断でやったという。
(報道官)基本的には、佐藤被告の考えで実施されたものと受け止めています。 これに関して阿部編集長は以下のように指摘している。
「村上叩き第二幕4――福井火砕流」(阿部重夫編集長ブログ)ああ、条約、協定、国際約束等の「有権解釈権」の問題を突く記者はおらんのかね。そこがミソであり、「組織的」の定義をとことん問い詰めれば、スポークスマンは往生したはずなのに、情けないなあ。ちゃんと勉強してほしいと思う。 ここでの有権解釈権というのがいまいちよく分からなかったので調べてみたら、検索の最初の方に出てきたのがこれ↓。
「「司法制度及び憲法裁判所(憲法の有権解釈権の所在の視点から)」に関する基礎的資料」(衆議院)
おそらく上記の文脈で言うものとは直接関係ないのだけれども、内閣法制局の記述が勉強になったのでこちらをメモっておきます。該当箇所の目次第3 内閣法制局の所掌事務等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
1 内閣法制局の設置(内閣法制局設置法1 条) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
2 内閣法制局の所掌事務等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
(1) 内閣法制局の所掌事務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
(2) 内閣として憲法解釈が必要となる場合・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
3 内閣法制局の役割、立場等に関する見解等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
(1) 内閣法制局の役割、立場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
(2) 内閣法制局の憲法解釈の位置付け等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
(3) 政策実現の阻害等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43
資料2 内閣法制局 実像と虚像(読売新聞 1997 年(平成9 年)
7 月26 日〜10 月31 日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・44
資料3 絶対権限℃揩ツ内閣法制局(東京新聞 2003 年(平成15 年)
5 月4 日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69 この中から最後の「(3)政策実現の疎外等」の部分を抜き出しておきます。(3) 政策実現の阻害等
ア 「内閣法制局―実像と虚像―番外編」 内閣法制局長官(当時) 大森
政輔(読売新聞、1997 年10 月11 日、12 日)
「法制局が他省庁の政策展開にまで口を出しすぎるのではないかという指摘がある」との質問に対して
一般的に法制局が政策にまで口を出すのは職責ではないし、すべきことではない。ただ、政策の展開はすべて憲法の範囲内で行わなければならないという制約があるから、憲法ののりを超えているかどうかについて、口を出すのは我々の職責ですから、政策に口を出しすぎるという批判は当たらない。
イ 「内閣法制局のあらまし―再建20 周年に寄せて―」 元内閣法制局長官 高辻正巳『時の法令』(大蔵省印刷局、1972 年、41 頁)
「行政部内で立案された新政策の実現に対して、その推進を期する一念から、内閣法制局が法律問題にかこつけ、とかくこれを阻害しているかのような受け取り方をする者があり、また、その受け取り方を鵜呑みにして、現実認識に欠ける法制官僚の保守的気質がそうさせるのだ…」との批判に対して
内閣法制局が、法令審査の立場から、原案に対して批判的であることは、もとより当然であるが、内閣の補佐機関である以上、必要な政策の実現に努めこそすれ、別の政策的意図をもってこれをはばむようなことは、むろんあり得ない。…およそ法令の実態に関する事実については、常時、必要な知識の獲得と理解の充実に努めるのが、その職務を遂行する上における最も基本の心構えであって、内閣法制局が現実認識に甘いというような見方は、その辺をしかと見極めることなく下されることがあってはならない。内閣法制局参事官の採用にあたって、現実認識に必要とされる経験や知識を重視するのも、こういう点を配慮すればこそのことである。… 基本的なことが要点良くまとめられている良い資料でした。
(参考)
「他省庁から見た内閣法制局」(BI@K)
まぁ結局冒頭のニュースの有権解釈権についてはよく分からないままなんだけれども・・・。
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