「(料金の)割引財源を道路建設に回せと要望したのは民主党だ」。高速道路の新たな上限料金制度の見直しを迫った民主党の小沢一郎幹事長に対し、前原誠司国土交通相は23日の記者会見で不満を漏らしたうえで、小沢氏が「道路建設」も「値下げ」も求めているとして「二律背反だ」と強く批判した。両氏のバトルは「国会審議後の見直し」で事実上決着したが、メンツをつぶされた前原氏は23日、「(新制度は)小沢氏の了承を得ていた」と主張し、なおも仕掛けた。背景には政府と党の間の政策調整機能不全があり、今後も同様の混乱が繰り返されることになりそうだ。【大場伸也、寺田剛】
前原氏は23日、「(民主党に)政策調査会がないことがこういう問題につながる。政調があれば、政府・民主党首脳会議で個別の政策について話をすることはない」と訴えた。小沢氏はこの日、だんまりを決め込んだ。
民主党には政調機関がないため、政務三役が政策会議などで党側に方針を説明しても、党との正式な「合意」は形成されない。政策決定は政府に一元化するとの建前からだ。
ところが実際は、小沢氏は重要と判断すれば平然と政策に介入する。22日、小沢氏は鹿児島市の会合で高速道路の新料金見直しについて「私が皆を代表して発言した」と釈明したが、民主党には政策で意見を集約する仕組みがないため、小沢氏の意見に政府が振り回されることになる。
前原氏の主張は、政府と党の政策調整をシステム化しないと、今後も小沢氏の恣意(しい)的な介入を許すというものだ。今回も馬淵澄夫副国交相が小沢氏に事前に説明していたが、小沢氏の「ちゃぶ台返し」を防げなかった。
鳩山由紀夫首相は23日夜、記者団に「小沢氏は全国のさまざまな声を伝えてくれたと思っている。(国会)審議の中で議論し、変えるべきところがあれば変えるというのは当然のプロセスだ」と語った。
毎日新聞 2010年4月24日 東京朝刊