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社説:舛添氏も新党 「顔」失った自民の寂しさ

 果たして、政党不信の受け皿になれるだろうか。動向が注目されていた自民党の舛添要一前厚生労働相が離党届を提出、新党結成に踏み出す。改革クラブと合流し、自身が党首に就く予定だ。

 厚労相を約2年務め社会保障などの政策通として知られ、次期リーダーの一人と目された舛添氏という人材を自民党はつなぎとめられなかった。一方で、新党が乱立の様相を呈する中、舛添氏と理念がどこまで一致しているかはっきりしない顔ぶれでの旗揚げが、国民に新鮮な印象を与えるかは疑問だ。舛添氏の個人人気頼みでは、前途多難である。

 これまで舛添氏は、谷垣禎一総裁ら執行部への激しい批判を展開してきた。一方で党内で勉強会を開くなど、執行部刷新と新党結成の両にらみ戦略とみられていた。舛添氏が求めた執行部刷新を谷垣氏は拒み、新党結成では与謝野馨元財務相に後れを取った。「(なかなか離党しない)オオカミ中年」とやゆする声さえ、自民党から出ていた。党内抗争に展望が開けず、離党で筋を通したということだろう。

 だが、知名度の高い舛添氏が決断した割に、衝撃が乏しかったことも事実だ。自民党内で、舛添氏に同調する動きは現状では広がりを欠いている。改革クラブとの連携を主体とした陣容で「舛添新党」だと強調しても、ぴんとこないのが国民の率直な印象ではないか。毎日新聞の最近の世論調査でも、舛添氏に新党結成を期待する人は2割にとどまり、むしろ「自民党総裁を目指すべきだ」の方が多かった。「舛添人気」だけで、新党が国民に評価されるわけではないのだ。

 また、舛添氏が自民党で連携を探っていた勢力は、小泉改革を推進する成長重視派が中心だったが、新党でこの路線をどこまで明確にするのか。政党要件を満たすのに必要な国会議員を集めることを優先し、理念が埋没してはいないか。きちんとした政策の説明が求められよう。

 民主、自民両党の迷走が目立つ中、「みんなの党」が政党支持率を伸ばし、「たちあがれ日本」や自治体首長らによる「日本創新党」といった新党が次々と名乗りをあげ、党名を覚えるのが大変なほどだ。政治に新風を送り込む期待を抱かせるが、よほど政策や理念を明確にしないと国民は面くらうし、第三極として生き残ることもできまい。

 それにつけても今回、最大のダメージを被ったのは、党再生の顔となり得る人材を失った自民党だ。舛添氏の離党を厄介ばらいのように受け止めているとしたら、救いようがない。組織崩壊の危機に直面しているという自覚こそが、必要だ。

毎日新聞 2010年4月23日 2時30分

 

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