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技術力低下の指摘も/東九州道ひび割れ橋2010年03月27日
ひび割れが原因で中断されていた東九州自動車道の広渡川(ひろとがわ)2号橋(全長265メートル、日南市北郷町)の工事が26日、1年ぶりに再開された。施工した中堅ゼネコン「ハザマ」(東京)が、自社負担で橋げたを全面的に取り換えることで、発注者の国土交通省九州地方整備局と合意した。一連の経緯の背景には、長引く不況や公務員削減のかげで、官民とも現場の技術力が落ちていることがある、と専門家らは指摘する。 「一般道で全面造り直しに至った例は1例知っているが、高速道路でのこのような事態は聞いたことがない」 25日に県庁で記者会見した伊藤高・国交省宮崎河川国道事務所長はこう話した。 国の直轄事業である2号橋は2008年9月に着工し、工費は10億2千万円。広渡川の両岸から建設を進め、今年2月に完成する計画だった。だが、昨年4月、右岸側から115メートルまで延びている橋げたに、幅最大1ミリのひびが長さ約9メートルにわたり4カ所見つかった。 九州地方整備局は同8月、土木の専門家ら7人による検討会議を発足。ひび割れ個所に樹脂を注入▽けたのコンクリートの厚みを増す▽炭素繊維シートを張り付ける――など、ハザマ側から出された改修案について検討を続けた。 だが関係者によると議論は紛糾。「これまでの経験から大丈夫という意見もあったが、最終的には新品の橋と同じ強度が担保できると判断しきれなかった」などとして、工事継続に関する最終的な判断を整備局に委ね、会議を解散してしまった。 ■□■ 25日の会見では、通常の公共工事では行われる、発注者(国)、施工業者(ハザマ)、設計会社(建設技術研究所)による3者協議が、今回は開かれていなかったことも分かった。「資料による間接的な協議は行った」として問題はなかったと国側は主張するが、再発防止策として伊藤所長が真っ先に挙げたのは、「3者協議を密に開くこと」だった。伊藤所長は「工期が遅れたことは申し訳ない」としながらも、責任の所在を「あくまでハザマにあり、国交省ではない」と訴える。 ひび割れの原因は、橋げたを支える「仮支柱」の設計ミス。橋げたの重さに耐えられず、5センチほど橋げたが食い込んだことでひびが生じた。設計した東京のコンサルタント会社「建設技術研究所」はすでに1カ月の指名停止処分を受けており、ミスを見抜けなかったとしてハザマが全額負担で造り直すことになった。 □■□ 同事務所によると、仮支柱は施工業者が責任を持って建設する「任意仮設」という方法による契約のため、国が検証する義務はないという。民間企業の技術力や発想を生かす狙いとして最近の公共工事で増えている方法という。 ただ、任意仮設が増えた背景には公務員の削減があるとの見方も出ている。ある国交省関係者は「昔は技術系職員が構造物の計算から発注までしていた。現場監督も職員が責任を持ってやっていたが、今は職員の数が減り、全部を見ることはできないから任意になってしまう」と言う。 一方、土木学会コンクリート委員会の宮川豊章・京都大教授は建設業界の構造的問題として、「不況で人員削減をしているなか、業界は仕事を取ろうと低価格での入札傾向にあり、1人あたりの仕事量は増えている。今回の件も、仕事が厳しいなかで欠陥を見落とした可能性がある」と指摘する。 (今村優莉)
マイタウン宮崎
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