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岩本義和
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スポーツナビ
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追う者の強み、追われる者の辛さ
＜１回戦 西武台（埼玉）vs大分（大分）＞
2004年12月31日
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| 劇的な同点ゴールからＰＫ戦を制した西武台イレブン【 スポーツナビ / 高須力 】 |
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■コーチングエリアから一歩も引かない両監督
埼玉スタジアムで行われた第一試合、西武台（埼玉）対大分（大分）は、一進一退の攻防の末、劇的な同点ゴールからＰＫ戦を制した西武台が勝利を収めた。
試合開始前に降り始めた小雪がぱらつく中、まず躍動したのは西武台の攻撃陣。試合開始直後からＦＷの杉本裕之、中村裕人、ウイングの島田祐輝、名倉夢人が頻繁にポジションチェンジを繰り返しながらサイドアタックを仕掛けると、大分ディフェンス陣が混乱。前半５分、右サイドからクロスをペナルティーエリア内で杉本が落とすと、キャプテン黒岩宏明が見事なミドルシュートを決め、西武台が先制した。
すると、早すぎる失点に、大分の朴英雄（パク・ヨンウン）監督がいきなり動く。１１分に１年生ＤＦ藤澤力也を下げ、ＭＦ片桐大貴を投入。それまでＦＷの位置にいた宮田繁輝を最終ラインに下げて、まずは守備から立て直しを図った。コーチングエリアぎりぎりまで出て、選手たちに檄を飛ばす朴監督。一方、しばらく冷静に試合を見ていた西武台の守屋保監督であったが、こちらも突然の動きを余儀なくされてしまう。
前半１８分、西武台最終ラインのＤＦ志田亮輔が、大分ＦＷに体を入れ替えられ、後を追うようにファウル。主審の判定は一発レッドカード。順調な滑り出しだったはずが、一気に目の前が暗くなる西武台。守屋監督もまたコーチングエリアぎりぎりの位置に出て、選手たちにポジションの修正を命じる。試合展開を見詰めながら、３６分にはＦＷ中村に代えて同じくＦＷの猪股達朗を投入したが、その直後の３９分、大分に中央から切り込まれ、上野晃典が右足アウトサイドにかけた鋭いシュートをゴール左隅に突き刺した。ハーフタイム直前の同点弾に、西武台イレブンは悔しさをにじませる。
■起死回生の同点ゴール、そしてＰＫ戦へ
雪の勢いが増し、ピッチが白く染まり出した後半戦。１人少ない西武台は、疲労も手伝ってか、徐々に押し込まれ始める。大分・長正之のシュートがポストに当たり、ヒヤリとしたのもつかの間の後半２１分、朴俊慶（パク・ジュンキュン）のミドルシュートが、精いっぱい横っ飛びしたＧＫ小澤宏亘の手を弾いて、ゴール右隅に転がり込む。ついに逆転――。その後も攻撃の手を緩めない大分に対し、西武台はカウンターから何度か決定機を作ったが、身長１７４センチのＧＫ来龍哉が、攻撃的な抜群のポジショニングでことごとく西武台のシュートを防いでいく。そして時計の針は４０分で止まり、ロスタイムに突入した。
終了のホイッスルを待つ白いピッチに、無数に引かれた線が浮かび上がった。それは選手たちが必死に体を投げ出し、雪を削った後に見える芝の跡。そこに、最後の線が刻まれる。前線に上がっていた西武台ＤＦ福田俊介が、決死のスライディングでボールをつなぐと、最終ラインをかいくぐった島田に渡る。“ホーム”埼玉スタジアムに集まった西武台応援団の悲鳴のような声援を背に、島田はＧＫとの１対１を制し起死回生の同点ゴールを突き刺した。そして、試合終了のホイッスルが鳴った。
ＰＫ戦では、大分４人目の長が失敗。西武台は５人全員が決め、初出場ながら見事に１回戦突破を果たした。勝利をほぼ手中にしていたはずの大分の朴監督は、「ＰＫ戦に入った流れから、負けを覚悟していた」とそのときの心境を語った。
「彼らは失ったものを取り戻した。たとえＰＫ戦で負けても悔いはない。だが、追いつかれたわれわれは、どうしてもいろいろ考えてしまう……」。
一方、同点ゴールを決めた殊勲の西武台・島田は「負けて当たり前だと思っていたから、最後には気持ちがひとつになった。ただ、ガムシャラにプレーしました」と笑顔で答えてくれた。
追う者の強みと、追われる者のつらさ――。ましてＰＫ戦はメンタルが大きく左右する。“必然”とまでは言わないが、８０分間を戦い終えた時点で、勝敗は決していたのかもしれない。
＜了＞
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