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きょうの社説 2010年4月23日
◎少数政党乱立 不満の受け皿になれるのか
民主党にはもう期待できないが、自民党も頼りにならない。そんな国民の不満を背景に
、新党が相次いで誕生している。国民的な人気のある自民党の舛添要一前厚生労働相が新党結成に踏み出したのも、自分たちがそうした不満の受け皿になれると踏んだからだろう。最近の世論調査では、渡辺喜美代表率いる「みんなの党」が公明党をしのぐ支持を得て いる。民主党政権の誕生が本格的な二大政党時代の幕開けになるどころか、みるみるうちに支持を失い、少数政党の乱立を招いたのは、皮肉な現象というほかない。 だが、非民主、非自民の第三極を目指す動きがどこまで国民の支持を得るかは未知数だ 。自民党という「沈没船」から逃げ出したように見られるのは大きなマイナスだろうし、かつて日本新党が誕生したときのような熱気も感じられない。自民党は舛添氏の離党に冷ややかな視線を向けているが、「ポスト谷垣」の最有力候補を失った痛手は大きいはずだ。平沼赳夫元経済産業相、与謝野馨元財務相らの「たちあがれ日本」や首長グループの「日本創新党」を含めて政府・与党への批判票が分散し、民主党を利する結果に終わる可能性も否定できないだろう。 舛添新党は、成長戦略の必要性を強く打ち出し、企業・団体献金の全廃や国会議員の半 減を旗印に掲げるとみられる。「脱官僚」を訴える「みんなの党」とは政策面での共通点がありそうだが、党首の相性は果たしてどうか。自主憲法制定や財政再建を掲げる「たちあがれ日本」とは政策面での違いが大きいのではないか。 せっかく既成政党のしがらみを離れたのだから、新党がそれぞれ主張をぶつけ合い、共 闘できる部分や違いを埋める可能性などについて、活発な論議を望みたい。自民党でもなく、民主党でもない第三極はどうあるべきか、国民は聴きたいはずだ。重苦しい政治状況に風穴を開け、既存政党にも刺激を与えてほしい。参院選後にキャスチングボードを握ろうとするあまり、内向きのままガードを固くするだけでは、国政に新しい流れをつくるのは難しいだろう。
◎普及遅い住基カード 利便性高める努力がいる
石川県内で交付された住民基本台帳カード(住基カード)は2009年度末で累計約2
万6500枚となり、普及率はやっと2%を超えたという。全国の普及率も同程度であり、住基カードの利用低迷は自治体の共通課題である。北陸には、住基カードの多目的利用に力を入れ、50%超の普及率を誇る南砺市のようなモデル自治体もあり、これにならい住基カードの利便性を高める一層の努力が各自治体に求められる。また、政府も住基カードの「将来像」を明確にする必要があるだろう。厚生労働省は年 金手帳や健康保険証などを1枚に集約する「社会保障カード」を11年度に導入する計画を立て、その中で、住基カードを活用することを検討してきた。しかし、民主党の年金改革案と違うため、昨年の事業仕分けで社会保障カード計画に待ったがかかり、住基カード活用案もあいまいなままになっている。 住基カードで受けられる行政サービスの拡大は、カード普及のポイントであり、住民票 の写しの取得や所得税の電子申告の本人確認に利用するという基本的な使い方のほか、印鑑登録証や各種証明書の自動交付、図書の貸し出し、公共施設の予約などにも使えるようにする自治体が徐々に増えている。南砺市はその先頭を走る自治体であり、福井県の市町も多目的利用に比較的熱心である。 しかし、南砺市以外の富山県の市町村や石川県の市町はまだ多目的利用に消極的である 。住基カードの機能を拡大するには、新しいシステム導入の財政負担が大きい上、実際の利用者がどれほどあるか、費用対効果を見通せないことが主な理由とされる。 住基ネットと一体の住基カードは電子政府・電子自治体の基盤であり、政府はカード交 付の無料化を援助して普及を促しているが、カードが必要と思う住民は少なく、多くの自治体はカード機能の多目的化に二の足を踏んでいる。政府はこうした実態を再認識し、高度情報化社会における住基カードの意義や役割をもう一度明確にして、普及のテコ入れを図る必要があるのではないか。
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