富士通は4月14日に緊急記者会見を開催し、元社長の野副州旦氏が辞任取消を求めている問題について、代表取締役会長の間塚道義氏が同社の見解を説明した。2時間におよんだ記者会見で間塚氏は「正直にいうと、今このような事態になり、取締役会で(野副氏を)解職し、皆さんにきちんと説明するべきだったと、私は考えている」と現在の心境も語っている。(一連の経緯は本文末尾に記載しています)
間塚氏は冒頭の約25分を使って経緯と見解を説明したが、その内容は会見中に富士通が発表した文書「元社長 野副州旦氏の辞任の経緯と当社の見解」をほぼ同様のもの。
裁判所が究極の外部調査委員会、なぜ訴えを取り下げた
野副氏側は2009年9月25日、取締役会の直前に設定された場で、一部の幹部から「反社会的勢力との関与が疑われる」(富士通)企業(A社)と付き合いを続けたため、代表取締役社長の辞任を強く迫られたとされたと主張している。この3月15日には取締役の地位保全の仮処分を横浜地方裁判所川崎支部に申し立てていた。
富士通側はこの場を、辞任を迫るものではなく、釈明と弁明の場であるとしている。この場には、間塚氏、取締役の大浦溥氏、取締役相談役の秋草直之氏、顧問の山本卓眞氏、監査役の山室惠氏、書記として法務本部長で安井三也氏がいたという。
裁判では、両者が主張して証拠を出す審尋期日が3月23日と4月6日に設けられた。第1回目の審尋期日では、9月25日の録音テープとA社に関する調査資料、野副氏が署名した辞任届などが証拠として提出されている。間塚氏は「第2回審尋の際、(裁判所から)当事者双方にさらなる主張や証拠の提出があるかと聞かれ、お互いがそれはないと回答した。(そのため)仮処分は結審し、あとは裁判所の判断を待つという段階だった」と説明する。
ところが4月7日、野副氏側が記者会見を開催して主張を公にした。「(野副氏は)取締役への復帰は求めていない、第三者委員会の設置を求めるという主張を展開し、まことに疑問に思っていた」(間塚氏)ところ、4月8日に裁判所から、野副氏が裁判を取り下げた旨の通知が送られてきたという。取り下げは記者会見の前日である4月6日。「当社は野副氏の(裁判)取り下げについて非常に疑問を感じている」と間塚氏は述べている。
なお、仮処分手続きの富士通側の代理人である井窪保彦弁護士は、辞任が決まった9月25日の場には同席していないとした上で、「(証拠として提出した)録音テープは聴いている。脅迫のような感じではなく、おだやかな雰囲気で話が進んでいた」と述べている。
また、ステークホルダーに対して真実を調査、公表するために、野副氏が求めている外部調査委員会については、「設置しない」(間塚氏)と断言した。「裁判所は客観性と公正性が担保された究極の外部調査委員会。もし野副氏が、マスコミに向けて言っているように外部調査委員会の判断がほしいというのであれば、お互いの言い分や証拠を出し合った裁判所の判断を受けるべき。当社も裁判所を通じて正確なところを届けようとしていたが、たとえ法的に認められる手段だとしても(取り下げは)誠に遺憾。しかも野副氏は裁判所の判断を避けながらも主張は続けた上、取締役復帰は求めていないという事実に反する主張をした」(間塚氏)
ニフティ売却をめぐり関係が悪化
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