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2010年 4月 7日(水)放送
ジャンル社会問題 事件・事故

犯罪“加害者” 家族たちの告白

(NO.2872)

内容紹介

 
 

重大事件になると必ず責任を追及され、社会にさらされる犯罪加害者の家族。犯罪とは直接関係のない子どもや親戚にまで影響が及び、最悪のケースでは自殺に追い込まれる家族もある。このたび、東北の市民団体が日本で初めて加害者家族を対象にしたカウンセリングやアンケート調査を実施したところ、その悲劇の実態が明らかになってきた。地域社会やメディア、ネットの攻撃によって「孤立」していく加害者家族。そこから浮かび上がる日本社会の姿に迫る。

出演者

  • 諸澤 英道さん(常磐大学国際被害者学研究所教授)

出演者の発言 番組中の出演者のコメントを掲載!

【スタジオ①】常磐大学理事長 諸澤英道さん

●加害者の家族が追い詰められる実態について

>>私は50年近く、犯罪学の研究してきまして、こういう問題があるということも、ずっと前から認識してたんですが、今、VTR見まして、わが国で、まだまだこの問題が深刻なんだということをあらためて再認識したんですね。
かつて、例えば60年代ぐらいのころですけれども、加害者、そしてその家族が抱えるいろんな困難な問題がある。それを、なんとかしなきゃ、ということで、専門家が取り組んできたんです。
国によっては、そういうことをだいぶ変えて、社会で支えるような組織が、いろいろできてきてる国もあるんですが、わが国の場合は、全然そういうことがないんですね。
被害者が抱える問題、そして、その家族が抱える、マスコミ取材とかいろいろなことから抱える問題を2次被害という言い方をすると思うんですが、かつて、加害者、その家族が抱える問題、2次被害ということで、専門家は取り組んできたということがあるんです。
ただ、私、やっぱり少し考えなきゃいけないことがあるな ということを感じました。
というのは、その加害者についての取り組み、典型的には、ラベリングみたいな問題があるんですが、そういうことについては、いろいろとわが国でも取り組みがあって、改善、更生させ、社会にどうやって戻すかということがいろいろ行われてきたんですね。
ただ、加害者の家族が抱える問題についてほとんど意識されてなかった。
実は、被害者問題は最近、だいぶ注目されてきて 被害者というと、当の本人、およびその家族、遺族などをひっくるめてみんな被害者という概念でとらえることができると思うんですね。ところが、加害者側の問題としては 加害者本人の問題と、その家族ないしは、その周辺の人の問題というのは やっぱり、切り離していかなきゃいけない、問題の本質がだいぶ違うんですね。
それが、わが国ではほとんど認識されてないような気がするんですね。

●実際に犯罪を犯した加害者と、犯していない家族が一緒に批判されることについて

>>日本にかぎらず、アジアの近隣国も似たようなものだと思うんですけども、日本は犯罪というのは、組織 家族とか地域とか、組織が生み出すという考えが非常に強いんですよね。ですから、その犯罪者を生んだ家族という見方がどうしても出てくる。
政府は、それを逆に利用して その家族や地域や職場が犯罪者を出さないように、あるいは、いったん出した場合、それをまた更生させる そういうふうにプラスに利用してきた面があるんですけども、このことは、実は、組織の中で犯罪者を見るという、つまり、加害者も家族も、みんないっしょだという見方を日本の中でしっかり根づかせてしまった。
それが、こういう背景にあるような気がしますね。


●一緒にみることで犯罪抑止の効果がある?

>>それは犯罪をさせないという面では、意味はあるんだろうと思うんですが 逆に、その犯罪者が抱えてる問題に目をつぶる。あるいは、犯罪者に対する、あるいは、家族に対するバッシングが起こってくる そして、それに対して誰も止めようとしない。
インターネットの時代になってそれが、どんどんエスカレートしてくる無責任な状態が起こってくるということだと思うんですよね。

●仙台のNPOの調査によれば最も困っている事柄として加害者家族があげたのが「事件について安心して話せる人がいない」。同じような体験した人たちと話せる場所が欲しいといったこと…。

>>私も、この調査の結果を見せてもらいましてね 最初、ハッとしたんです。というのは、被害者遺族が抱える問題と、加害者の家族が抱える問題 3分の2は、少なくても共通点がある、多くの面で共通しているということはわかります。例えば、事件後、家族がみんなばらばらになってしまった、家族関係が悪くなってしまった、人の目が気になる、近所の目が気になる、外出もできない、あるいは、嫌がらせやどうのこうの、あるいは、相談できる相手がいない、こういうたぐいの問題が加害者の家族にもある。
これは、被害者の家族にもあるんですけど、そういう点があるということは やはり、これは社会が抱える大きな問題なんだろうなと思うんですけどね。

●加害者の家族についての議論の出発点について。

>>実は、15年程前に 私、被害者支援の組織を立ち上げて、それを動かすボランティアの養成講座やったんですけども、そこに参加してくる人のほとんどが実は匿名であり、家族や職場に内緒で来ていると、もちろん、マスコミ取材なんかも、受けないという状態がありました。それが、15年たってこういうふうに日本は変わったんですよね。
恐らく今、被害者支援しているということを隠すより、むしろ、胸をはっていると思うんですよね。加害者側を支援するような、そういう動きというのも、当然あっていいし
それは、一人一人の考え方で、そういう人たち、被害者を支える人たち、そういう人たちの考え方を、むしろ温かく見守っていく。それが成熟した社会だろうと思いますね。