【コラム】北工作員逮捕と検察スキャンダル(下)

 スパイ事件は、接触者を一網打尽にするまで、可能な限り外部に漏らさず進められるのが常識だ。ところが、今回の事件は韓国に入国していた二人だけが逮捕され、2カ月にわたる捜査が終了したため「十分な捜査が行われたのか」と疑問の声も上がっている。

 検察は「心外だ」と言うかもしれないが、かつての検察に見られた「政治的感覚」のことを考えると、疑われるのも無理はない。韓国の検察は、歴代政権の親衛隊的な役割をしているとして「政治検察」と呼ばれ、そうしたイメージは今もあまり改善されていない。

 最近の例では、韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相事件があった。韓元首相収賄事件の一審で無罪判決が出る前日、検察は別のわいろ事件で家宅捜索を行い、「目をそらさせようとした」と批判を呼んだ。検察は「全く別の事件を捜査しただけ」と弁明したが、なぜあのように検察にだけ疑われるようなことがよく起きるのか、いぶかる人も多い。

 いくら「政治検察」だとしても、北朝鮮によるこの重大な破壊工作を検察のスキャンダルが暴かれる日に合わせ発表したことについては、批判を避けられないだろう。検察が小手先のやり方で重大な安保事件をうやむやにするなら、これは間接的な利敵行為と同じだ。利用すべきことと、利用してはならないことがある。

 今、インターネット上には、スパイ事件を巡り、ありとあらゆる荒唐無稽(むけい)な陰謀説が飛び交っている。スパイであることが明白なのにこれを否定し、疑ってしまうほど、韓国社会の安保意識が希薄になっているのは誠に嘆かわしい。これはすべてが検察のせいだというわけではないが、検察の奇妙な時期判断により、全韓国人が不安を感じる深刻な安保事件がおかしな方向に流れてしまうのでは、と懸念している。

朴正薫(パク・ジョンフン)社会政策部長

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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