【社説】北の暗殺工作員はまだいるのではないか

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は21日、「南北が分断されてから60年も過ぎたため、軍もややマンネリ化しているかもしれない。この機会に国民も軍も、すぐ隣に世界で最も好戦的な北朝鮮という国があるという事実を改めて認識すべきだ」と発言した。ファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党秘書は本紙とのインタビューで、自分を暗殺しようとした二人のスパイが逮捕されたことについて、「おそらくどこかに同じ任務を持った工作員がまだいるだろう」と述べた。

 国家情報院は本来、国内に潜伏する北朝鮮のスパイや同調勢力を捕らえ、国の安全を守るという使命を持つ組織だ。ところが前政権はこの組織に対し、南北首脳会談の密使という本来とは別の仕事をさせた。また、検察や警察の公安担当組織やその担当者の数も、それ以前の政権に比べて50%近く減らし、さらに熟練の検事や警官は昇進対象から外して、時には強制的に辞表を出させることもあった。その結果、10年間の左派政権期間中、スパイの検挙数は1998年9人、2000年3人、02年2人、05年1人と急速に減った。つまり公安当局は、自らの任務を放棄するかのような状態になってしまったのだ。

 一方で国情院は05年、国会に提出した報告書で、「北朝鮮がここ5年間に韓国国内の工作員に送った670の指令通信を捕捉した」と明らかにした。さらに08年、国軍機務司令部は「軍内部の左翼勢力は170人以上、軍の機密流出容疑者50人以上、関連する調査件数100件以上」と国防長官に報告している。06年に起こった一心会スパイ事件では、386世代(1990年代に30歳代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)のスパイたちが、IT(情報技術)業界、英語教材販売会社、論述学院、政党幹部などのまともな仕事に就いていたことが分かった。韓国で左派政権時代の10年間に、北朝鮮が職業や年代に関係なく、韓国国内に植え付けた同調勢力の種が、今は韓国にとって致命的な危害を加えかねない毒キノコに成長したとも考えられる。

 さらに08年には北朝鮮の女性スパイ、元正花(ウォン・ジョンファ)受刑者が逮捕されたが、元・受刑者と同居していた安全保障教育担当将校は、この女がスパイであることを知りながら報告しなかった。また、このスパイが52カ所もの現場の部隊を回りながら、北朝鮮の体制を称賛するCDを使った「安保教育」を行っていたことも後に分かった。国情院などは、元・受刑者がスパイであることをつかめず、逆に北朝鮮関連の情報員として取り込もうとしたという笑い話も実際に起こった。今もインターネット上には、「天安沈没事故に北朝鮮が関連しているという説はでっち上げだ」という書き込みがあふれている。これが大韓民国の北朝鮮に対する安保意識の現状だ。

 政府は今からでも、国内に暗殺の使命を帯びたスパイがいないか、またスパイを捜し出す能力があるのか、さらに国民と政府は金正日(キム・ジョンイル)体制の危険性を正確に理解し、わずかのすきも見せない覚悟と準備ができているのかなどの点について、しっかりとチェックを行い、対策を立てなければならない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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