北朝鮮デノミ:昨秋、市場は活気にあふれていたが…(下)

 しかし、デノミ断行後の今年3月2-3日の穏城市場は、閑散としていた。商人も住民の姿も見当たらない。売り場の9割は空いていた。市場の片隅でモヤシを売っている母娘の姿が見えるが、価格は1キロ100ウォン(新貨幣)。また、1キロ300ウォンのトウモロコシやコメを1-2袋持ち込んで商売する小売商が数人いる程度だ。こうした状況について、カレブ宣教会のキム・ソンウン牧師は、「当局に税金を払う正式な売り場の商人が消えることになれば、北朝鮮の中産層の没落を意味する」と語った。

 韓国が送った支援物資が北朝鮮の市場に流れ込んでいるという証拠も確認された。市場のあちこちで、大韓赤十字社のロゴが付いた穀物の袋が発見された。一部の住民は、こうした袋を買い物かご代わりに使っており、「大韓民国が送った贈り物」という文字が書かれた大型の袋も見えた。韓国からの支援物資の袋も、北朝鮮では人気だという。統一部の関係者は、「韓国が無償で支援した救護物資を、党幹部などが横領した後、市場に売ったといううわさもあるが、確かな情報ではない」と語った。

 穏城駅の風景も、デノミの前と後では全く異なる。昨年10月、駅の広場に到着した長距離バスから、住民たちはせっせと物資を降ろしていた。ある住民は、乗車券を売って稼いだ金を靴に隠している。ある女性は自分の封筒を指しながら、「米国のコメ」と自慢した。しかし今年3月、駅の広場にはほとんど人影がなく、長距離バスも見当たらなかった。ただ、赤い文字で「21世紀の太陽・金正日(キム・ジョンイル)将軍万歳!」と刻まれた石造りの物だけが目に留まった。

 穏城郡出身のある脱北者は、「市場は午前8時30分ごろから始まり、日が落ちる午後7時ごろに閉店していた。休日もなく活気があった穏城の市場が崩れ去ったようで、残念だ」と語った。

北朝鮮がデノミを断行する前の昨年10月、咸鏡北道穏城の市場で、商人と客が駆け引きをしている。大韓赤十字社のロゴが入った穀物の袋も見える。/カレブ宣教会・本紙クロスメディアチーム

イ・ハクチュン記者

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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