【コラム】魚雷攻撃を否定する人は何を恐れているのか(下)

魚雷攻撃を示す物証が見つかったため、新たな珍説も

 岩礁に衝突したという説もまた、沈没の原因にはなり得ないという科学的な根拠が示された。「天安」が爆発したときに探知された地震波は、TNT火薬180キロ分に相当する。これは「天安」が岩礁に衝突した場合に発生し得る爆発力の1000倍に相当する、と専門家たちは説明する。

 内部の爆発でも、岩礁への衝突でもないことが分かったため、次に取り沙汰された第3の説が、「船体が老朽化に伴って破壊され、真っ二つに割れた」という説だ。

 「天安」が重みに耐えられずに壊れたとすれば、沈没する瞬間にいったん空中へ浮かび上がるのが常識だ、という指摘が出た。また、金属疲労による破壊だったとすれば、切断面は滑らかでなければならないはずだが、「天安」の切断面はギザギザになっていた。

 こうした物証がなくても、韓国海軍の艦艇が老朽化に耐えられずに壊れたという発想自体が荒唐無稽(むけい)なものだ。「天安」は韓国海軍が運用している哨戒艦26隻のうち、18番目に建造されたものだ。「天安」よりも古い哨戒艦は17隻もあるというわけだ。「天安」が突然、真っ二つに割れて沈没するほど古い船だったとすれば、それよりも古い17隻の哨戒艦で勤務する約2000人の乗組員たちは、いつ溺れ死んでもおかしくないという運命を背負って勤務していることになる。船体の老朽化が原因だ、と主張する人たちは、一体何を守るために、韓国海軍の兵士たちやその家族を、何の根拠もなく恐怖に陥れようとしたのだろうか。

 左派のインターネットユーザーの間では現在も、「『天安』は船内に大量の水が流れ込んだため、ペンニョン島方面へ避難する途中、水深の浅い海域で突然現れた岩礁にぶつかり、船体の真ん中から真っ二つに割れた」という主張が堂々と繰り広げられている。これは老朽化による破壊説と、岩礁への衝突説をごちゃ混ぜにした、新たな珍説だ。事実をはっきりと示す物証が出てきたため、メディアでは事実を認めざるを得なくなった一方、無責任なネット上の空間では、最後のゲリラ戦が繰り広げられているというわけだ。

 ネット上で珍説を繰り広げる人たちは、最初から今回の事故の真相などには興味がなかった。新たな事実が明らかになるたび、どうにかして「魚雷以外の原因で事故が発生した」ということを説明しようと、頭をひねって次々と珍説を作り出したのだ。彼らはなぜ、「天安」が魚雷攻撃によって破壊されたという、最も合理的かつ単純な結論を、そんなに恐れているのだろうか。

金昌均(キム・チャンギュン)記者(政治部長)

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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