ファン氏暗殺未遂:金英徹総局長が工作員に指示(下)

北の工作員二人の検挙まで

「“目の上のタンコブ”ファン・ジャンヨプの首を取れ」

 キム・ミョンホ容疑者とトン・ミョングァン容疑者に「ファン・ジャンヨプを暗殺せよ」との命令を直接下したのは、北朝鮮の対南工作総本山、人民武力部傘下偵察総局の金英徹(キム・ヨンチョル)総局長(朝鮮人民軍上長)だった。二人は国情院での取り調べで、金総局長から指示された内容を詳しく説明した。金総局長は、「まずはファン・ジャンヨプの居住地と掛かり付けの病院、活動内容について詳しく調べて報告せよ」と指示したという。金総局長はさらに、「“目の上のタンコブ”ファン・ジャンヨプの首を取れ」と直接命令した。

 成功に向けた任務を遂行する一方で、失敗した場合の行動計画についても指示を受けていた。二人は国情院の取り調べに対し、「偵察総局から任務に失敗、あるいは遂行が困難な場合には、第3国に出国して大使館(北朝鮮大使館)に入り、連絡を取りながら次の命令を待てという指示も受けていた」と証言した。

国情院の追及を受け自白

 脱北者を装い今年1月と2月に韓国に入国したキム・ミョンホ容疑者とトン・ミョングァン容疑者は、国情院が脱北者に対して行う合同尋問で足がついた。脱北者が韓国に入国した際、国情院は脱北の目的や経緯などについて確認する合同尋問を行うが、ここで二人は氏名や出身地を偽った。とりわけトン容疑者はファン・ジャンヨプ氏の親せきだと主張し、「ファン・ジャンヨプの親せきということで、これ以上昇進できなかったため、南朝鮮(韓国)を選んだ」と証言したという。

 二人の証言内容がこれまで収集した北朝鮮情報と一致しない点を不信に思った国情院は、彼らの主張する出身地や仕事などが一致する別の脱北者と面会させた。すると、対話が円滑に進まなかったことから、「ニセ脱北者」だということが明らかになり、両容疑者は最終的に「偵察総局が派遣した工作員」であることを自白した。

 調査官らは当初、二人が偵察総局の工作員だということも疑っていたが、偵察総局についての証言が、当局が把握する内容と一致したため、確信を持つようになったという。

李明振(イ・ミョンジン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
関連記事 記事リスト

このページのトップに戻る