【社説】ファン氏暗殺工作員を派遣する北朝鮮

 国家情報院と検察は20日、裁判所の逮捕状発布を受け、北朝鮮の人民武力部偵察総局が脱北者として韓国に侵入させた同局所属のキム・ミョンホ容疑者(36)とトン・ミョングァン容疑者(36)を逮捕、収監した。二人はいずれも少佐クラスで、1997年に韓国に亡命したファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党秘書(87)暗殺のために韓国に侵入したという。北朝鮮の対南工作を総括する偵察総局は、それまで個別にスパイ工作や韓国の破壊活動を行ってきた人民武力部偵察局、朝鮮労働党作戦部、35号室を統合して2008年に発足した。北朝鮮政府内で強硬路線を主導してきた呉克烈(オ・グクリョル)国防副委員長の直系で、人民軍上将(中将)の金英徹(キム・ヨンチョル)氏が総局長を務める。

 公安当局によると、二人の工作員は2004年から特殊訓練を受け始め、昨年11月に脱北ブローカーの力を借りていったんタイに入国し、今年の1月と2月にそれぞれ韓国にやって来たという。その後、国家情報院による調査で出身地と氏名を偽っていたことが明らかになり、直後に偵察総局特殊工作員だということを自白した。

 国家情報院の元世勲(ウォン・セフン)院長は最近、「哨戒艦『天安』の沈没が北朝鮮の仕業なら、これは偵察総局が行ったものという指摘がある」と証言した。つまり「天安」を沈没させた最も有力な容疑者集団として注目を集めているのが、偵察総局ということだ。

 北朝鮮はこれまで1968年1月に武装ゲリラ襲撃事件、83年にラングーン事件、87年に大韓航空858便爆破事件などを相次いで引き起こした。今回の「天安」沈没やファン元秘書暗殺未遂も、北朝鮮が60年代から80年代に引き起こした破壊工作へ回帰する兆候とも受け取ることができる。

 北朝鮮に2300万人いる住民の多くは、今も空腹に耐えられず豆満江を越えて体を売っており、また北朝鮮での乳幼児死亡率は1000人当たり48人と世界でも最悪だ。このような状況で金正日(キム・ジョンイル)総書記は、故・金日成(キム・イルソン)主席の誕生日を祝うとして爆竹や花火を輸入しては打ち上げ、幹部らに数百台の高級外車をプレゼントした。2008年夏に脳疾患で倒れた金総書記が、父である金主席の横で韓国に対する破壊工作の先頭に立っていた1970-80年代の人材を新たに登用し、「金氏王朝」の崩壊を阻止するため、過激な行動に乗り出したのだ。

 大韓民国が北朝鮮を制圧するには、経済成長の一部を犠牲にしてでも、安全保障の力量をさらに大きく強化する必要がある。また、北朝鮮が今後も挑発を続けるのであれば、体制の終わりを前倒しさせるという断固とした覚悟を示す以外にない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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