脱北者を装いタイを経て韓国へ

人民武力部偵察総局所属

　北朝鮮の対南工作機関である人民武力部偵察総局所属の工作員二人が、1997年に亡命したファン・ジャンヨプ元朝鮮労働党秘書（87）暗殺のため、脱北者を偽装して韓国に侵入し、当局に逮捕されたことが明らかになった。

　国家情報院とソウル中央地検公安1部は20日、上記の容疑で北朝鮮偵察総局所属の少佐、キム・ミョンホ容疑者（36）とトン・ミョングァン容疑者（36）の逮捕状がソウル中央地裁から発布されたことを受け、二人を逮捕した。

　国情院と検察によると、二人は昨年11月に中朝国境を越えて中国吉林省延辺の朝鮮族居住地域に入り、現地の偵察総局連絡所で北朝鮮の政府関係者に会い、携帯電話や工作資金などを受け取った。その後、脱北者を装い現地の脱北ブローカーに接触し、タイのバンコクに渡った。そこで現地の警察に逮捕され、強制追放の形で今年1月と2月に韓国へ入国し、国家情報院による調査を受けてきた。

　国情院は二人が本当に脱北者かどうかを調べる過程で、いずれも出身地や氏名を偽っていた事実を確認し、この点について追求する中で、「偵察総局所属の特殊要員」との自白を引き出したという。

　国情院と検察によると、取り調べで二人は、「北朝鮮偵察総局の金英徹（キム・ヨンチョル）総局長から直接、“ファン・ジャンヨプの首を取ってこい”という命令を受けた」と証言したという。

　二人はさらに、「目的を達成できなかった場合には、第3国の（北朝鮮）大使館に逃げ込み、追加の使命が下されるのを待て」という指示まで受けていた。

　北朝鮮偵察総局は昨年、人民武力部（国防部に相当）偵察局、朝鮮労働党作戦部、35号室など、対南工作を担当してきた部署の統合により発足した。現在は対南工作を統括している。

　朝鮮人民軍上将（中将）でもある金総局長は、軍内部でも対南強硬路線を主導する人物として知られ、金正日（キム・ジョンイル）総書記と呉克烈（オ・グクリョル）国防副委員長から直接の指示を受ける立場にあるという。

　今回逮捕された二人は、1998年に朝鮮労働党に入党した直後から熱心に活動し、思想と能力を認められたことから、2004年に人民武力部偵察局で韓国への侵入工作や暗殺訓練などの工作員教育を集中的に受けてきた。これらは検察と国情院が調査の結果、明らかにした。

　国情院によると、二人は脱北者として韓国への定着に成功すれば、韓国で活動してきた固定スパイらと接触して活動資金などを受け取り、追加の指示を受けようとする可能性が高いとみて、これらの点についても追求しているという。これについて、二人は今のところ何も語っていない、と検察は明らかにした。

崔源奎（チェ・ウォンギュ）記者

李明振（イ・ミョンジン）記者