【社説】「天安」沈没事件踏まえ統制権の論議を
李明博(イ・ミョンバク)大統領は20日、与野党の代表との昼食会で、2012年4月に韓米連合司令部が解体され、戦時作戦統制権が韓国軍に移管されることについて、「軍内部にも異論がある以上、慎重に検討する」と述べた。これまで統制権の移管問題にできるだけ言及を避けてきた大統領が、「慎重な検討」という言葉を使ったのだ。
在郷軍人会は同日、統制権に関する特別講演会を開き、これまでに統制権移管延期を求める983万人の署名が集まったことを明らかにした上で、「『天安』沈没事件は、韓米連合司令部の存在が欠かせないことを立証した」との決議文を採択した。講演会で韓国軍の元老、ペク・ソンヨプ将軍は「われわれ自らが堅固な韓米同盟体制に揺らぎを生じさせる行為は、金正日(キム・ジョンイル)を助けることになる」と批判した。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、統制権に関する論議を始めるに当たり、韓半島(朝鮮半島)の安全保障状況と韓国軍の作戦遂行能力に対する綿密な評価を行わず、始終「自主」という政権特有の理念を優先した。そして、国家の元老、歴代の国防部長官、軍参謀総長の絶対多数による反対を無視し、2007年2月に統制権移管を決めた。米国の専門家の指摘によれば、盧武鉉前大統領が統制権移管を「自主国防」の象徴として掲げるや、世界的な米軍再編に合わせ、在韓米軍を海軍・空軍主体に転換する構想を抱いていたブッシュ政権がそれを受け入れたものだ。ブッシュ政権でホワイトハウスのアジア政策担当者を務めたマイケル・グリーン、ビクター・チャの両氏は「当時の合意は最終的なものではなく、韓米間に状況変化があれば、統制権移管時期を変更できるという了解が存在した」と語っている。
統制権移管問題の核心は、韓国軍に2012年に統制権を引き継ぐだけの準備ができているかだ。米国は韓半島の危機状況における軍事的負担を減らしたいという本音を、「韓国軍は十分な能力と経験を備えている」という言葉で表現してきた。しかし、「天安」沈没事件を見ると、韓国軍が統制権の移管を受ける初歩的な能力さえ備えていないのではないかという疑問が生じる。1200トン級の艦船が真っ二つになった事態を国防部長官や合同参謀本部議長は50分間も知らされず、数千億ウォン(数百億円)が投じられた最先端の海軍戦略指揮統制体系(KNTDS)は、「天安」の沈没で位置信号が途絶えたにもかかわらず、危機信号すら発することができなかった。兵士が携帯電話で連絡して、事態が判明したというのだからあきれる。
李大統領は同日、「(『天安』沈没事件の対応で)軍に相当改善の余地があると考えている。国防先進化委員会を設置し、現在作業を進めている」と述べた。統制権移管問題はそうした韓国軍の能力と体制に対する冷静な再評価に基づき、韓半島の安全保障の不安定性がもたらす米国の世界的負担について、米国とより客観的な対話をするところから始めるべきだ。
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