【萬物相】専業主婦への財産分与

 韓国初の女性洋画家、羅蕙錫(ナ・ヘソク)は1930年、結婚10年目で離婚した。そして、離婚に至る経緯を詳しく説明した『離婚告白状』を雑誌「三千里」に掲載し、公開の場で財産分与を求めた。だが結局、世間から相手にされず、寂しい余生を送ることを余儀なくされた。

 大法院(日本の最高裁判所に相当)は2002年、「夫婦のどちらか一方が『自分の財産』と主張しても、配偶者の協力によって財産を増やしたことが認められれば、財産分与の対象になる」という判決を下した。また、夫とのけんかが絶えず、結婚25年目で離婚した妻に、慰謝料なしで夫婦の財産の半分に当たる1億2000万ウォン(約990万円)の財産分与を認めた判例もある。離婚の理由とは関係なく、財産分与が認められたというわけだ。1999年に発表された論文によると、離婚した女性に41-50%の財産分与が認められたケースは、共働きの夫婦を含めても、20.6%にすぎなかった。だが、2008年12月から昨年2月までの間に全国の裁判所で1審判決が言い渡された227件の離婚訴訟で、妻への財産分与が40-50%まで認められたケースは、135件に達し、全体の約6割を占めた。

 ソウル家庭裁判所は19日、20年にわたる結婚生活で、二人の子どもを育てた専業主婦Aさんに対し、50%の財産分与を認めた。建設会社を経営する夫を相手取って起こした離婚・財産分与請求の訴訟で、夫に対し、慰謝料7000万ウォン(約580万円)と、夫婦の財産の半分に当たる9億ウォン(約7400万円)の支払いを命じる判決を言い渡した。同家裁はまた、今年初めに離婚した専業主婦Bさんに対しても、財産分与の比率を50%まで認めた。10年以上結婚生活を送った専業主婦による、財産形成への貢献度を、夫と同等に見なす判例が、10年前に比べて大幅に増えたというわけだ。現在、家事手伝いの毎月の平均報酬額は180-200万ウォン(約15万-16万5000円)とされる。休日もない専業主婦の家事は、少なくとも月200万ウォン-250万ウォン(約21万円)程度の価値があるものと評価し、夫が高所得者であれば、配偶者の期待所得もその分だけ増える、と裁判所は説明する。

 米国では、50州のうち43州が離婚した夫婦の共有財産の分割を認めている。カリフォルニア州など8州では、50%ずつ分割するのが原則となっている。共働きの夫婦だけでなく、専業主婦による家事労働などについても、財産形成への貢献度を高く評価したというわけだ。ドイツやフランス、スイスでも、夫婦の財産を50%ずつ分割している。一方、イギリスの専業主婦の場合、財産分与額が33%にとどまっている。

 最近、米国では結婚を控えたカップルの30%が、結婚前に財産分割の契約を交わすことを望んでいるという。「離婚寸前になって財産を分割するようでは遅い」として、あらかじめ財産を分割しておくというわけだ。「愛情にはだまされても、金で泣くようなことはしない」という風潮が、世界の夫婦の間で定着しつつあるのではないだろうか。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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