中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索

料金見直しで右往左往 地に落ちた首相の信頼 '10/4/23

 高速道路の上限料金制をめぐり、政権が右往左往している。鳩山由紀夫首相は22日、決まったばかりの料金見直し方針を前原誠司国土交通相の求めに応じあっさり撤回。政府、与党は最終決着先送りによる沈静化に躍起だが、普天間移設問題に次ぐ混迷に、首相の信頼が地に落ちた印象は否めない。

 ▽暮令朝改

 前日の21日に小沢一郎民主党幹事長の料金見直し要請を「できるだろう」と受け入れた首相。ところが、22日昼には「現時点では見直しは行わない」とする「妥協案」を提示した前原氏に対し「はい、分かりました」と了承、最後は握手までして別れた。

 首相の変わり身の早さに、政府筋は「朝令暮改ならぬ“暮令朝改”だな」と皮肉った。

 新料金制度は国交省内で検討し、前原氏が9日に発表した。方針が覆されれば国交相としての面目は丸つぶれとなるのは確実。「前原氏は抗議のために辞任するのではないか」。政府、与党内には21日夜から緊張が走っていた。

 政権への打撃を恐れた平野博文官房長官は22日午前、馬淵澄夫国交副大臣を官邸に呼び、善処を指示。その結論が決着先送り。前原氏は将来的な見直しはないのかとの記者団の質問に「現時点では見直しを行わない」と繰り返すだけだった。

 民主党の山岡賢次国対委員長は22日昼、平野氏と会談後、記者団に「委員会審議の過程で意見や提言を受け、政府側で結論を出す」と説明。小沢氏に近い参院幹部は「前原氏の顔を立ててやったということだ」と解説した。

 ▽色あせた看板

 小沢氏の「一声」で方針がひっくり返るのは昨年のガソリン税など暫定税率廃止問題もあり、これが初めてではない。鳩山政権の看板である「政策決定の内閣一元化」は完全に色あせた格好だ。

 党幹部は今回の混乱について「そもそも党側に事前説明がなかった」と政府側の責任を強調。参院選勝利を最優先に考える小沢氏にとって、大半の利用者に実質値上げとなる新制度は「到底のめるはずがない」(小沢氏周辺)というわけだ。

 小沢氏は22日、鹿児島市の会合で「無料化どころか、値上げになったのでは説明がつかない。全国からごうごうの非難が来た」と語った。

 政策一元化に伴う政策調査会の廃止で党側の意見が政策に反映される機会は極端に減少し、揚げ句の果ての小沢氏介入。「政策調査会があればこんな事態は起きなかった」。ベテラン議員の一人は今さらながら悔やんでみせた。

 ▽ジレンマ

 今後上限料金制は見直されるのか、されないのか。

 前原氏ら国交省側は実質的な値上げで捻出ねんしゅつした財源約1兆4千億円を、上信越道など4路線の4車線化や名古屋環状2号線などの整備に回す考えに対し、山岡氏は財源を削ってでも値上げ幅を縮小すべきだとの立場だ。

 その場合、通勤割引の継続や割高に設定した本州四国連絡道路の上限料金を引き下げる方法が想定されるが、道路整備の遅滞に地元が反発するのは必至だ。

 着地点は簡単に見つかりそうにないが、22日夜も首相に深刻さはなかった。「新しい政治に(党の)皆さんも加わって作り上げていこうじゃないかというメッセージと思っていただきたい」




HomeTopBackNextLast
安全安心