Name: TarHeel Date: 01/25 23:38
沢井さん、こんばんは。業界歴32年のTarHeelと申します。
まずラックレートの意味ですが、一般人だけでなく旅行業界にいる人間でもその正しい意味を知らないようです。個人向け正規料金、割引なし、というのが一般的な理解のようですが、正しくは「ホテルが消費者に公開している宿泊料金」のことです。公開とはパンフ、インターネット、新聞、テレビなど広く一般消費者が手にとって直接確認できるものを指します。誰でも買おうと思えば買える料金のことです。ラックとはRack(書籍を置く棚)の意味があります。いつでも見てね、ということです。
そして一つの部屋がいつも一つのラックレートか、というものでもありません。例えば、
・ホテルのパンフに書いてある一部屋あたりの料金 (厳密な意味でのラックレート。年間を通じて変わらない。これが一番高い) ・ホテルの海外の親会社が運営しているサイトでの料金 (かなり高いが、時によりキャンペーンなどで安い料金もある) ・旅行会社のパンフ、例えばJTBエースに掲載されている料金 (旅行会社によっても、季節によっても変わる) ・旅行会社のサイトに掲載されている料金 (ほぼ旅行会社のパンフと同じだが、オフシーズンにはこれより安くするときもある) ・ホテルが運営する公式サイトの中にある料金 (季節や曜日によって細かく変わる) ・ホテル以外(例えば楽天トラベル)のサイトにある料金 (変動はホテルのサイトに準じているが、それより高いときも安いときもある)
え?と思うかもしれませんが、以上はすべてラックレートです。これに対してラックレートでないものって何?と思うでしょう。これは一般消費者の知らないレートです。悪意で隠している、という意味ではありません。例えば、 ・大手旅行会社への卸価格(パンフに掲載させる企画料金用) ・年間を通じて大量に泊まってくれる大企業用の契約料金 が代表的な非ラックレートです。
さてお尋ねの点のポイントは「旅行会社はホテルが直接消費者に提示している料金より高く販売していいのか」と言うことですね。結論から言うと何の問題もありません。ただし一番厳格な意味でのラックレート(ここで一番最初に挙げた料金)より高く売ろうとする旅行会社はいないでしょうね。では、どんなことがお尋ねの例に当たるでしょうか。
典型的な例として、 ・ある旅行会社のパンフレット(年に2回ほどしか発行しないので、ほぼ固定料金)に掲載されている料金が、ホテル自身が運営する予約サイトに掲載した料金より高いとき が挙げられます。
これはよく見かけますよ。その旅行会社としては面白くないですが、ホテルも季節波動やオフデイのような短い閑散期にあわせて細かく料金を変えてきます。パンフだと印刷する時間が掛かりますが、サイトであれば「よし、来週の前半は今自分のサイトで発表済みの料金より、1,000円安くしよう」と決めて、翌日には安い料金が出ると言う訳です。
旅行会社も面白くありませんが、消費者も当惑するときがあります。ホテル自身のサイトで一室15,000円と出ているのを見た。安いと思って馴染みの旅行会社の店頭に出かけて予約を頼んだらパンフ掲載価格は17,000円だ、なんてね。
日本の消費者の常識ではまだ「一物一価」。つまり商品はどこで、いつ、誰が買っても常に同じ価格だ、という、長い伝統に裏打ちされた認識があります。それに加えて大きな旅行会社ならホテルから直接買うより安くて当たり前、なんて都合のいい誤解(笑)がありますものね。
その常識に反して逆転の価格があると、「詐欺だ」なんて騒ぐお客様もいます。でも詐欺でもなんでもなく、ホテルは旅行会社に許可を得ることもなく、安い料金を自由に設定できます。ま、あんまり派手にやると大手旅行会社から「それなら、来年はウチのパンフには載せない!」なんて叱られますから、程々にしていますけど。
ホテルに泊まることを趣味にしているお客様もいましてね、この人たちが昔は怒っていたものです。 「電話でホテルの予約センターに料金を聞いたら、そのホテル自身が運営するサイトでの料金より高かった」なんて・・・。でもこれは当たり前の話です。予約センターは社員を使って対応、予約サイトは無人で人件費ゼロ。コストが違うから料金も違います。安いのが欲しいならサイトから予約。これが現代の常識、って訳です。
ですからホテルのフロントに予約なしで来て、「サイトに掲載されてる料金があるだろ。あれで泊まらせろ」と言うのはお断りなんです。 「この近くにインターネットカフェがあります。そこで当ホテルのサイトにアクセスして予約をしてから又お出でくださいませ」と言うのです。
余談のほうが長くなりましたが、これでお望みのお答えになっていますか? 違ったり、足らないときはまた書き込んでください。昼休みならこちらも書き込めますのでね。
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