主に母乳を介して乳児に感染し、九州に多い成人T細胞白血病(ATL)のウイルス感染者が、関東地方では20年近くで1.5倍に増えるなど全国に広がっていることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。妊婦の感染を調べる血液検査が徹底されていない実態も判明。研究班は、感染の根絶には全国的な検査の徹底が必要との提言をまとめた。
ATLは母乳や精液に含まれるウイルスで感染する。生涯発症率は約5%と低いが、根治は困難。感染していれば母乳をやめて人工乳にするのが最も効果的とされる。
厚労省の研究班(主任研究者、山口一成・国立感染症研究所客員研究員)は2006〜07年、献血した16〜65歳の男女の血液から推計。全国の感染者は107万9千人で、1990年比で11万4千人減ったが、首都圏では増えていた。人の移動が原因とみられる。
調査の地域分けの違いで単純に比較はできないが、関東は19万人で6万2千人増、中国・四国でも増えていた。90年は九州・沖縄の感染者が全体の50.9%を占めていたが、今回45.7%まで低下。関東は10.8%から17.7%と増えた。近畿は17.0%から15.9%、北陸・東海は6.9%から7.6%だった。
91年の厚生省(当時)研究班の報告では、発症者は全国で700人と推定され、2050年前後にほぼ根絶するとみられていた。感染者も九州に集中していたことから、厚労省は検査を妊婦健診に加えるかは自治体に委ねていた。検査費用は850〜1900円。検査を公費で負担しているのは長崎や鹿児島など一部の県だけだ。しかし、ここ数年、ATLの死者は年間1100人前後で推移、発症者が増えている。