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安全か、乗客の利便か?JRだけ長時間ストップ

 朝のラッシュ時に台風18号が接近した8日の首都圏では、JRの主要各線が長時間運転を見合わせた一方、私鉄はダイヤが乱れながらも運行を続けた。この違いの背景には、強風で走行中の特急が横転し5人が死亡した2005年の羽越線事故以降、JR東日本が風に対する社内規定を強化し、強風下の運転に慎重を期すようになったことがある。優先すべきは安全か乗客の利便か―。

 都心を循環する山手線は内回り、外回りとも午前8時すぎから約3時間ストップ。ほかに京浜東北、中央、常磐、総武などの路線も午後にかけて全面的に止まった。私鉄や地下鉄はこれほど影響がなく「雲が切れて日も差し始めたのに、なぜJRだけ動かないのか」(新宿駅の利用客)という状態に。私鉄とJRが接続するターミナル駅は、乗り換えできない人々であふれ返った。

 羽越線事故を教訓にJR東日本は06年1月、風の規制を厳しく見直した。それまで風速毎秒30メートルだった運転中止基準は25メートルに。ほかに橋や高架など風が強い個所をリストアップし、線路脇の風速計は羽越線事故時の228基から、今年3月末までに674基に増やした。それまでキャッチできなかった風が捕捉できるようになった半面、「長時間の運転中止も増えた」(担当者)という。

 結局、8日は首都圏で2657本の電車が運休。影響人員は新幹線を含め303万人に上り、87年の会社設立以来最悪の数字に。JR東日本広報部は「多くのお客さまにご迷惑をかけたが、安全に配慮した結果だった。ご理解いただきたい」と説明する。

 阿部誠治関西大教授(公益事業論)は「鉄道事業は乗客を正確に目的地に運ぶことと安全を両立させることが仕事で、JR東日本にとって非常に悩ましい判断だったと思う。基準は常に見直していいが、あくまで安全確保を最優先にすべきだ」と話している。

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