頭蓋骨単純撮影に用いられる撮影法は正面前後位・後前位撮影、側位撮影、タウン(Towne)法、軸位撮影である。
頭蓋骨撮影では、正中面、耳垂直面、ドイツ水平面、眼窩耳孔線などが体位の基準面(線)である。
頭部撮影で正中面を垂直にする撮影法は頭部前後位撮影、タウン法、軸位撮影、ウォータース(Waters)法などがある。
後頭骨の骨折線の診断に適した撮影法は頭部側位撮影、タウン法である。
正円孔を描出できる撮影法はウォータース法とコールドウェル法である。
頭蓋骨の正面像よりも側面像でより明瞭に観察できる部位は、蝶形骨洞とトルコ鞍である。
頭部単純X線写真で描出されないのは脳室と中心溝などで、描出されるのはトルコ鞍、血管溝と石灰化などである。
頭部概観単純正面・側面像は頭蓋全般が含まれることが必要である。
体位は正中面と眼窩耳孔線(あるいはドイツ水平線)をフィルムに対し垂直とする。
中心線は眉間を入射点とし、外後頭隆起を射出点として、フィルムに垂直に入射させる。
頭部正面像は左右対称で眼窩内に側頭骨錐体上縁が投影され、内耳道を描出する。
[頭蓋骨前後位撮影] |
体位は正中矢状面をフィルム面と平行にする。
タウン(Towne)法は両側錐体、大後頭孔、後頭蓋窩部やトルコ鞍の鞍背などを描出する。
体位は仰臥位で後頭部をフィルム面に付け、正中矢状面と眼窩耳孔線(OM線)を垂直にする。
中心線は頭側より25゚〜40゚の角度で、両外耳孔を結ぶ線の中点を通るように入射させる。
タウン法のX線像は左右対称で、大後頭孔陰影の中央にトルコ鞍の鞍背部を描出する。
[タウン法] | [タウン法像] |
頭蓋軸位撮影(頭蓋底撮影)は頭頂部をフィルム面に付けドイツ水平線に垂直な方向で撮影する方法である。
頭蓋軸位撮影法は副鼻腔、錐体部などを描出する。
また、描出される孔、棘は、大後頭孔、棘孔、破裂孔、卵円孔、頸静脈孔である。
[頭蓋軸位撮影法] |
ウォータース(Waters)法は副鼻腔(上顎洞、前頭洞)、眼窩下縁、頬骨、上顎骨などの撮影に用いられる。
体位は原則として立位または座位とし、正中面を垂直、ドイツ水平線がフィルム面と45゚ になるように顎を突き出す体位である。
X線中心線はフィルム面に対して垂直に入射させる。
ウォータース法は左右対称で上顎洞底と側頭骨錐体部の重複を避けて描出する。
体位が立位または座位なのは、液面形成の描出を重視する撮影法だからである。
[ウォータース法] |
コールドウェル(Caldwell)法は前頭骨、前頭洞、篩骨洞、眼窩などの撮影に用いられる。
体位は、腹臥位または座位で、前額部をフィルム面につけてドイツ水平線、正中矢状面ともフィルム面に垂直とする。
中心線は、眉間を射出点として、頭尾方向20゜で入射する。
[コールドウェル法] | [副鼻腔後前位撮影] |
内耳道の経眼窩撮影法は眼窩耳孔線と中心線とをフィルム面に垂直にしてP→A方向で鼻根点に射出する。
シュラー(Schuller)法は聴器撮影、顎関節撮影に用いられる。
シュラー法は内耳道と外耳道とが重なり、乳突部、鼓室、S状静脈洞を描出する。
シュラー法は検側をフィルムに付けた側位で正中矢状面を水平にし、中心線はドイツ水平線に対して、頭側より20゚〜25゚の角度で検側外耳孔に向けて入射する方法である。よって、非検側の錐体部が足側に投影される。
[シュラー法] | [シュラー法像] |
ゾンネンカルプ(Sonnenkalb)法は聴器撮影の一つである。
体位は腹臥位で、正中面、ドイツ水平面とも、15゜顔面側、尾側へ傾斜させる。検側 外耳孔をX線中心射出点に合わせる。
中心線は非検側外耳孔後方3.5cm、上方3.5cmの点を入射点とし、フィルムに垂直に入射する。
ステンバース(Stenvers)法は聴器撮影の一つであり、錐体の長軸をフィルム面と平行にする撮影法である。
ステンバース法は耳小骨、骨半規管、内耳道を描出する。
体位は腹臥位で、正中矢状面を検側へ45゚傾け、ドイツ水平線がフィルム面に垂直になるように顎を引く。
中心線は足側から約12゚で後頭結節と非検側外耳孔を結ぶ線の後頭側1/3の点に入射させる。
[ステンバース法] | [ステンバース法像] |
多軌道断層撮影により、中耳と後頭骨や副鼻腔との重複を排除し、微細な構造を描出する。
眼球では二重曝射法が用いられる。
[レーゼ像(視神経管像)] |
顎関節正面撮影法(顎関節経眼窩撮影法)は眼窩内に関節突起と関節腔を描出する。
頬骨・頬骨弓の撮影法には、ウォータース(Waters)法、白岩法、頭蓋骨半軸位法、軸位法がある。
外傷後右頬部がはれている場合、診断に役立つ撮影法は、ウォータース法と軸位撮影である。
鼻骨側面撮影の体位は側臥位で、頭部正中面をフィルムと平行にし、中心線は鼻根部、フィルムに対して垂直に入射する。
口内法における中心線の方向はCieszynskiの2等分線法則で求められ、2等分法、等長法と呼ばれている。
上顎歯撮影(口内法)の体位は開口位で、上顎咬合面を水平にする。
下顎歯撮影(口内法)では咬合面に対する中心線は、下方より上方へ向けて傾斜させる。
口内法では、着脱可能な義歯は除去させる。
照射野は照射筒(コーン)で制限している。
歯科パノラマ撮影法には体腔管方式のパナグラフィと断層撮影方式のオルソパントモグラフィおよびパントモグラフィがある。
体腔管方式はX線管の焦点を口腔内に入れて撮影を行う方法で、SIDは5cm程度である。
断層撮影方式は断層撮影の原理が用いられる。
回転式歯科パノラマ撮影(断層撮影方式)はスリット状のX線束にて全歯牙及び上・下顎骨を断層撮像する方法である。
照射時間は5〜16秒と装置により2、3通りの照射時間が選択可能であるが、患者の体躯の大きさに応じて照射時間を調節することは少ない。
X線束は咬合平面に対して尾頭方向8゜で入射している。
通常のパノラマ撮影では、拡大率は切歯部より臼歯部の方がやや大きい。
頭部X線規格写真撮影法(roentgenogaraphic cephalography)は一定基準により、計測のため頭部を一定条件のもとで撮影する方法で、頭蓋の発育の研究や、矯正歯科学における診断などに用いられる。
セファログラフィのSIDは165cmと一定である
副鼻腔は、前頭洞、上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞の4洞の総称であり、互いに重なり合ったX線像を呈する。
ウォータース法は前頭洞の後部、前頭洞と篩骨蜂巣との関係、上顎洞および頬骨・頬骨弓、上顎骨眼窩面の状態の観察を目的とする。
コールドウェル法は腹臥位で、正中面、OM線をフィルムに垂直にし、中心線はOM線に対して頭側から鼻根部にむけ15゚で斜入させる方法である。
ゾンネンカルプ法は両側乳突蜂巣、鼓室の重複を避けるために、前額面と矢状面の両面に対して15゚のX線入射角度をつける方法で、側頭骨岩様部の側面像が得られる。
ステンバース法は、内耳錐体撮影(乳様突起)の一つで、側頭骨正面像が得られる。
マイヤー法は背臥位で正中面を検側へ45゚傾ける。中心線は頭側から45゚で、反対側眼窩下縁に向かって入射する方法で、側頭骨軸位像が得られる。
眼窩撮影法としては、コールドウェル法、顔面正面撮影、顔面側位撮影がある。