きょうの社説 2010年4月22日

◎事業仕分け第2弾 単なる政治ショーでは困る
 政府があすから始める事業仕分け第2弾は、支持率急落に悩む鳩山由紀夫首相にとって 、数少ない政権浮揚のチャンスになるだろう。官僚の天下り法人などにメスを入れ、非効率な事業や組織がないかを検証し、税金の無駄遣いを排除する狙いは国民受けしやすい。2010度予算案を対象にした昨年の事業仕分けのときと同様、世論の高い評価が得られるかもしれない。

 だが、事業仕分けを政権浮揚のテコにしようと画策すれば、本来の目的を見失う。国民 の目を意識する余り、官僚や公益法人の幹部をやりこめたり、しかり飛ばす政治ショーになっては困る。参院選向けの派手なパフォーマンスではなく、不透明な契約や隠された支出をあぶり出し、無駄の徹底排除に専心してほしい。

 独法や公益法人には、補助金や交付金の形で特別会計などから多額の予算が流れている 。これまで、各省庁が配下にある独法や公益法人に多額の基金を積み立て、天下りの役人OBに高額の給料を支払ったり、住宅手当や通勤手当を手厚くするなどしていた事例が明らかになった。随意契約にしても、数字上は大幅に減り、一般競争入札への移行が進んでいるが、一般競争入札の応札が1社しかなく、実態は随意契約と変わらないケースも珍しくない。

 事業仕分けの目的は、実態が見えにくい独法などの組織や事業が本当に必要なのか、効 率的に運用されているかを国民の目線で点検することにある。問題点を浮き彫りにし、必要ならば、組織の存廃や事業の廃止にまで踏み込んでほしい。

 昨年の事業仕分けは手法の目新しさも手伝って、国民の評価を受けたが、今回、対象と なる公益法人や独立行政法人への支出額は4兆円程度で、削減額はせいぜい数千億円といわれる。だが、重要なのは金額の多寡ではない。制度や組織の構造的な問題に深く切り込み、無駄を洗い出していく地味な努力の積み重ねである。たとえ、削減額が少なくとも中身が伴っていれば、国民は納得するだろう。粗雑な論議を振りかざし、目先の数字を積むことに血道を上げるようなまねは避けてもらいたい。

◎高校生の就職対策 職業意識をさらに高めて
 来春の高卒予定者の就職を支援する今年度の取り組みが始まった。石川県教委は石川労 働局や県内高校の進路指導主事らを集めた「連絡会議」を開き、県などは強化策として初めて7月に開く企業ガイダンスの参加企業の募集を開始した。厳しい雇用情勢が続くなか、積極的な取り組みを進めて生徒らにより早く、多くの企業や仕事の内容に関する情報を提供してほしい。

 支援強化の柱の一つとして高校生の長期型企業実習も従来の3校から9校に拡充された 。実際に仕事の現場に立てば、就職がより現実味を帯び、職業選択の大きな参考になる。このような実習の効果を上げ、就職のミスマッチや早期離職の防止にもつながるように、仕事の意義や自己の適性などに関する生徒の職業意識をさらに高めるようにしてもらいたい。

 昨年度末までに就職が決定した公立高卒業者が前年度を上回る97.7%に達したこと は、関係機関の連携や就職支援員配置などの対策の積み重ねの成果といえよう。ただ、就職難を乗り越えても、3年以内に高卒の4割以上が離職するという状況が問題になっている。今後、就職率と職場での定着率を高めるには、早い時期からの企業情報などの提供とともに、生徒自らが職業に対する理解を深めることが欠かせない。

 今年度の高校生の長期型企業実習は工業、農業、商業系の計9校で実施する。地元企業 の協力を得て、各校から3年生計130人程度の参加を予定しており、生徒の就業意欲を促す成果を期待したい。せっかくの機会を生かすには、受け入れ体制の整備はもとより、生徒本人が真摯(しんし)に実習に取り組まねばならない。あいさつなどのマナー、仕事に対する責任感、積極性などは、社会人としての基本的な心構えに通じる。

 昨年の説明会のなかでも企業側から「すぐに投げ出さない前向きな明るい人材」などを 希望する声があり、学校側にも職業教育の再点検が求められている。行政や学校、企業、家庭が就職に向けての課題を共有して、地元の産業を支える若者を育てていきたい。