きょうのコラム「時鐘」 2010年4月22日

 全国学力テストの問題を見て恐縮した。中学3年の国語で新聞が題材となり、コラムの見方まで出題されていたからである

先ごろ開かれた「日本一の教育力を問う」シンポジウムを思い出させた。「音読は必ず家族の前で読むように」との指導があった。テスト成績上位の福井県が学力向上の秘けつとして家庭学習の大切さを述べたのである

本紙作文コンクールにはこんな話もある。最優秀賞を受けた中学生は毎朝、ご飯前に声を出してコラムを読む。大きな声で読み始めると家族が「何?」と反応する。新聞が教材となって、音読と家庭学習が結びつく一例だった

今回の学力テストに新聞が登場したのは、知識を実生活に活かす新しい指導要領の先取りだとの分析もある。国語の学力は算数と連動する。問題文の理解に結びつくためであり、音読の大事さは一教科だけにとどまらない

一昔前まで、声を出して新聞を読むお年寄りが多かった。新聞社には直した原稿を声に出して確認するデスクもいた。「読んで効く」新聞は世代を超えて暮らしの中に生きる教材だった、と言えば手前ミソに過ぎようか。