いつもの放言癖では済まされない。石原慎太郎東京都知事が、永住外国人への地方選挙権付与などに反対する集会で放った「与党の幹部に帰化した(人の)子孫が多い」という趣旨の発言だ▲
石原知事といえば、かつて「三国人」発言で物議を醸した。ちょうど10年前だ。なぜ、いつも不用意に人を傷つけるのか。日本の首都を預かるトップとしては、人権感覚が欠如しているというしかない▲
「帰化」は中華思想的発想の言葉、というのを何かで読んだ記憶がある。つまり帰化は支配下に入ることをも意味する。知事は差別的発言を繰り返してきた。思うに知事の中では、日本や日本人中心の独自の世界観が形成されているのだろう▲
が、日本や日本人の成り立ちは単純ではない。古来から現在の中国や朝鮮半島から多くの影響を受けている。人の移動も含めてだ。集団での渡来もあった。政治や産業に深く関与した人も多い。東アジアは長らく一体だったのだ▲
それが崩れる契機の一つは、明治維新だろう。日本は「脱亜入欧」をスローガンに文明化をめざした。が、一方で中国や朝鮮半島の人々を蔑視(べっし)し、虐げてきた。この意味でも、知事発言は許されない▲
東アジア共同体といわれる。知事の言葉を逆手にとれば、域内の先祖は同じであろう。国や国籍を超えて、手を携える方策を考えることこそが政治家の務めだ。