中日−ヤクルト 汗を飛ばしながら力投する朝倉=ナゴヤドームで(谷沢昇司撮影)
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さすがは連敗ストッパー。中日は20日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で、今季初登板の先発・朝倉健太投手(28)が6回まで無失点の力投をみせ、チームの連敗を3で止めた。7回途中でリリーフの助けを借りたが、故障で出遅れたプロ11年目の右腕が、フォーム改造で自らを、そしてチームをよみがえらせた。
情けない思いを糧にした。初登板、初勝利。お立ち台に上がった朝倉が胸の内を明かした。
「今年に懸ける思いがすごく強くて、ケガしちゃって悔しかったけど、テレビを見ながら、こういう投げられる日が来るのを楽しみに思ってきた。きょうという日を迎えられてよかった」
腰痛で出遅れた。ファームにいた。悔しい日々。朝倉はテレビのスイッチを入れた。1軍の試合をあえて見た。いつかそこに自分が行く。その思いを忘れないように。
「去年のクライマックスシリーズで肩を痛めていて、自分の中ではすごくやり切れない思いがあった。今年はしっかりやらないといけない」
例年以上に今季に懸けていた。昨季は右腕の血行障害から復活し、2年ぶり4度目の2けた勝利を挙げた。最後に落とし穴が待っていた。右肩痛。CSは戦場にすら向かえなかった。
情けなく、つらかった。思い出し、苦い味を口に含み続けた。もう故障はしない。そして投球フォーム改造に取り組んだ。「いろいろと試行錯誤して、ああいう投げ方になりました」。本人の感覚では「体の力を逃がさないように、内側の力で投げるという意識」という。左腕の上げ幅が小さくなり、体のひねりも少なくなった。ムダを省いて理にかなったフォームに近づいたようだ。
キャンプインまで順調。また一山あった。「まさか、ですよ。今までやったことがない場所でしたから」。予期していなかったキャンプ中の故障。それが腰痛だった。
「故障してしまって、正直焦ってたんですけど、自分がファームで結果を残していればチャンスはある、と思ってやっていました」
正直に告白すれば不安だった。だが、一切表に出さなかった。今や投手陣のリーダー的存在。ほかの投手が背中を見ている。リハビリ中でも同じだ。ウソでも前向きな姿勢を貫いた。「大丈夫です。何とか、頑張りますよ」。いつも明るく、自分に言い聞かせるように繰り返していた。
大きな山を乗り越えてきたリーダーはタフだった。「連敗してるのは分かってたけど、それを考えると重圧になる。一球一球、バッターに投げることだけに集中していった」。3連敗中という逆風を止めた。
誰だって、こんなときは投げたくない。「いいか、嫌か、と言えば、嫌な雰囲気はあるけど、自分のピッチングをすれば何とかなるんじゃないかという気持ちはありました」。昨年、チームの3連敗以上は6回あった。先発の白星で止めたのは4度あり、うち3度が朝倉だった。連敗ストッパー。経験が血肉となった。邪心を追い払った。白星を連れてきた。
6回まで12個の内野ゴロを打たせた。失策、併殺打がそれぞれ1つずつあって18アウト中12アウトを内野ゴロで奪った。安打以外、フェアゾーンに飛球は打たせなかった。「要所要所で真っすぐが外に決まってくれた」。完ぺきな6イニング0/3、自責ゼロだ。頼もしい兄貴分がたくましくなって帰ってきた。 (生駒泰大)
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