哨戒艦沈没:北朝鮮偵察総局の関与説浮上(下)

 北朝鮮専門家は「金英徹よりも呉克烈に注意すべきだ」と口をそろえる。空軍司令官出身の呉副委員長は79歳で、1989年から20年以上にわたり、スパイの派遣、育成を担当する労働党作戦部長を務めた。潜水艇やハンググライダーによる浸透方法を考案したのも呉副委員長だという。ある幹部出身の脱北者は呉副委員長について、「真の戦略家だ。頭が切れ、忠誠心が高く、金総書記の信頼が厚い」と述べた。呉副委員長は1979-88年の総参謀長在任中、北朝鮮軍の現代化を主導した。当時軍の実力者だった呉振宇(オ・ジンウ)人民武力相と対立し左遷されたこともあったが、金総書記による保護で生き残ったとされる。金総書記の三男、ジョンウン氏への権力継承プロセスにも深く関与しているとされる。

 問題は呉克烈、金英徹という軍部勢力が率いる偵察総局の対南工作は「戦闘性が高まる」(ユ・ドンリョル治安政策研究所研究官)との見方があることだ。過去60年間の北朝鮮の対南工作は労働党が主導した。作戦部のほか、35号室は大韓航空機爆破など海外でのテロや要人拉致を担当した。しかし、脳卒中で倒れた金総書記がある程度回復した08年後半、北朝鮮内部では「党が60年にわたり対南工作を担当し、果たして何か達成できたか」という批判が高まったという。その結果、人民武力部傘下の偵察局が35号室を吸収する形で偵察総局が成立した。軍部が対南工作を主導するようになった形だ。

 これについて、安全保障当局の関係者は、1968年に軍部強硬派の金昌奉(キム・チャンボン)民族保衛相(現在の人民武力相)が対南工作を主導した際に大事件が多かった事実に注目する必要があると指摘した。68年には1月21日に大統領府(青瓦台)襲撃事件、1月23日にはプエブロ号事件、10月には蔚珍・三陟武装共産ゲリラ事件が相次いで起きた。

 68年と今年の類似点を指摘する見解もある。北朝鮮の後継体制が不透明な状態にあることが共通しており、68年当時の金総書記の年齡は26歳、現在後継者と目されるジョンウン氏は27歳だ。68年のように世襲過程で「軍事冒険主義」が再び台頭する可能性も指摘されている。北朝鮮消息筋は「ジョンウン氏は現在、国防委で後継に向けた学習を行っているとみられる。呉克烈、金英徹の両氏が国防委の幹部(国防委政策局長)出身であることを考えれば、ジョンウン氏への権力継承に関連し、南に対する挑発を行う可能性が高い」と分析した。

アン・ヨンヒョン記者

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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