きょうの社説 2010年4月21日

◎全国学力テスト 全員方式に戻してはどうか
 約3割の小中学校を抽出した今年の全国学力テストで、実際の参加率が希望校を含めて 7割を超えたのは、抽出方式では地域や学校ごとの詳細な学力データが得られないという地方側の意思表示といえる。石川、福井県は100%が参加し、富山県も一部学校が後日実施となったが、ほとんどが問題用紙を入手した。北陸の状況をみれば、政権交代による方針転換が支持されていないことが分かる。

 過去3回の学力テストで3県ともに平均点は上位であり、テストを学力向上策に生かす 意識は着実に浸透してきたように思われる。だが、今回は抽出校以外の採点、集計業務は現場任せで、自治体で業者委託と教師の作業に分かれるなど対応に苦心する姿が目立った。昨年まで国が実施してきたことを考えれば、現場で割り切れぬ思いが生じるのも当然だろう。

 文部科学省は来年のテスト方式については夏の概算要求までに検討する方針だが、今回 の参加状況をみれば、中途半端な抽出方式を改め、全員方式に戻すことも検討する必要がある。地方の意欲に水を差さず、現場を後押しするような改善策を望みたい。

 全国学力テストは政権交代後の事業仕分けを通して予算が大幅に圧縮され、都道府県別 の比較ができる最低限のサンプルということで3割の抽出率になった。だが、希望校には問題用紙の配布を認めたため、全国で13県が全員参加となった。採点、集計業務の負担を考えて見送ったケースもあり、希望校はもっと多かったのではないか。

 抽出方式は国が大まかな傾向をつかめても、そうしたデータは地方にはあまり役に立た ない。教師の資質向上に生かすためにも、やはり学校別など詳細な分析が必要である。「全員参加」で足並みをそろえた県は、得られるデータを最大限に活用できるよう比較可能な集計をしてほしい。

 抽出校は文科省、それ以外は学校や委託業者が採点するのはいびつな姿である。川端達 夫文科相は自主参加校の多さを「過渡期」と指摘したが、地方の意欲をもっと前向きに受け止める必要があるのではないか。

◎ODA見直し 財政難ならなお戦略的に
 外務省が政府開発援助(ODA)見直しの中間報告をまとめた。昨年の行政刷新会議の 事業仕分けでは、無駄の排除という掛け声の下、ODAの無償資金協力による施設整備や国際協力機構(JICA)の経費などが縮減判定を受け、今年度ODA予算は約8%減となったが、財政の制約を受けざるを得ないとなれば、なお一層ODAの戦略的な実施が重要になってくる。

 今回の見直しは、国民に広く理解されるODAをめざし、岡田克也外相の指示で進めら れている。ODAの目的は端的にいえば、途上国支援や国際社会の安定に寄与する「国際貢献」と、それによる「国益」の追求である。

 中間報告はODAを「先進国から途上国への施しではなく、世界の共同利益追求の手段 」と位置づけた。国際貢献の側面をより強調したかたちであるが、利害対立が激しい国際社会では「世界の共同利益」のためという美しい理念だけでなく、国益の観点もより重視する必要がある。

 中間報告が、国益に沿ってODA対象国を拡大したり、新幹線や上下水道事業の輸出な ど国際ビジネスを念頭に、日本企業が優位な分野で援助を加速させる考えを示したのは当然であろう。

 日本の2009年のODA純支出額は約94億8千万ドル(8850億円)で、前年と 同じく米仏独英に続き世界第5位である。05年の主要国首脳会議で、09年までに100億ドル積み増すとした国際公約は達成できなかった。

 日本にとってODAは重要な外交手段であり、予算確保の努力が求められるが、国際貢 献を積極的に行うためには、ODAの資金援助だけでなく人的支援を含めた総合戦略が必要ではないか。

 たとえば、国際機関に支払う日本の拠出金や分担金は多いが、負担割合に比べて、各機 関で働く日本人職員の人数は少ない。また、若者の内向き志向の強まりもあってか、青年海外協力隊の応募者が減少傾向をたどっているのはさみしい限りである。こうした状況を改め、マンパワーによる国際貢献をもっと進めたい。