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児童ポルノ:ブロッキング、先送り アクセス遮断、違法性見解割れ

 インターネット上の児童ポルノ流通防止対策を検討する警察庁の小委員会は25日、問題サイトへのアクセスをプロバイダー事業者が強制的に遮断するブロッキングの導入について、電気通信事業法上の「通信の秘密」を侵害すると認めたうえで、違法性を問われないケースに該当するかどうかは結論を先送りする報告書をまとめた。今後は、政府の犯罪対策閣僚会議の児童ポルノ排除対策ワーキングチームで、導入の可否が検討される。【千代崎聖史、丹野恒一】

 報告書をまとめたのは、児童ポルノ流通防止対策推進協議会(会長、野口京子・文化女子大教授)内の有識者やプロバイダー事業者から成るブロッキング検討委員会。児童ポルノのブロッキング実施を巡り、(1)技術、コストの両面から採用可能な手法(2)通信の秘密を侵害する行為だとしても、違法性を問われないケースといえるか--を議論してきた。

 報告書によると、(1)については、ブロッキングは通信の秘密を侵害する行為だと認め、利用可能な四つの手法のうち、英国のプロバイダー事業者「BT」が導入している「ハイブリッドフィルタリング」を最も推奨すべきだとした。ファイル単位でのブロッキングが可能で、児童ポルノ以外のものまでブロックする「オーバーブロッキング」問題が生じにくいためとしている。

 (2)では、児童ポルノのブロッキングが、刑法で違法性を問わないと定める「正当業務行為」や「緊急避難」に当たるかを検討。正当行為の範囲内かどうかはメンバーの意見が分かれたため、両論を併記した。また、他に取りうる方法がない時に許される緊急避難に該当するかについては結論に至らなかったことから、導入の可否については明言せず、引き続き議論が必要だとする表現にとどまった。

 ブロッキングを巡っては、産業界や教育関係者らでつくる民間団体「安心ネットづくり促進協議会」の児童ポルノ対策作業部会が今月19日、「緊急避難として許容される余地があると考えられる」との報告をまとめている。

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 ■解説

 ◇欧州中心に導入進む

 児童ポルノ対策の切り札とされるブロッキング導入がすんなりと進まない背景には、憲法で保障されている通信の秘密を重視する総務省と、被写体となった被害児童の早期救済に主眼を置く警察庁とのスタンスの違いがある。

 ブロッキングの主体となるプロバイダー事業者らは、ネットユーザーからの訴訟リスクもあり、監督官庁である総務省の「お墨付き」がなければ、容易には踏み切れない。事業者が多くメンバーに加わる安心ネット促進協の児童ポルノ対策作業部会の報告書が、警察庁の小委員会に比べ、違法性阻却のケースをかなり狭くとらえているのはそのためだ。

 しかし、作業部会の結論のように緊急避難のみ違法性が問われないとなった場合、ブロッキングが許されるのは、捜査協力が得られない海外サーバーに画像が置かれていたり、サイト管理者が海外にいて連絡が取れないケースなど削除・検挙が困難な場合に限定される恐れが出てくる。

 児童ポルノの被害は「人命に比肩する侵害」といわれる。ブロッキングは既に、英国やノルウェー、イタリアなど欧州を中心に広がり、韓国でも行われている。次の議論の舞台となる犯罪対策閣僚会議のワーキングチームでは、実効性を担保できるブロッキングの在り方の検討が望まれる。【千代崎聖史】

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 ■ことば

 ◇ブロッキング

 ユーザーがサイトを閲覧する際、プロバイダー事業者がユーザーの同意なしに、児童ポルノサイトなどあらかじめ決められた一定のサイトへのアクセスにかかわるIPアドレスやURLを検知、アクセスを遮断する措置。同意を得ない強制という点で、フィルタリングとは異なる。

毎日新聞 2010年3月25日 東京夕刊

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