27戦27勝、27KO。無敵のパンチで世界チャンプに君臨した男が相手を病院送りにしたなら話は分かるが、妻を“墓場送り”にしてはシャレにならない。そして、自らも命を絶った。
米英メディアの報道によると、現場となったのは、ベネズエラ中北部カラボボ州バレンシアの「インターコンチネンタル・ホテル」。バレロ容疑者は現地時間18日午前5時30分ごろ、同ホテルの受付で従業員に「殺人を犯した」などと告白。ベネズエラ警察当局が室内で妻、ジェニファー・カロライナ・ビエラ・デ・バレロさんの遺体を発見した。
遺体には、数カ所の刺し傷があったという。バレロ容疑者は容疑を認め、地元警察署に連行され、取り調べを受けた後に逮捕。留置場(独房)に入れらたが、同19日未明、自分の衣服を鉄格子に巻き付け、首をつっていた。警察当局者は「バレロ容疑者を発見した際、わずかに息はあったが、助からなかった」と話した。遺体は州内の検死施設に運ばれた。
バレロ容疑者は先月にも、ジェニファーさんに暴力を加えた疑いで身柄を拘束され、2007年にはジェニファーさんや妹を暴行をしたとして告訴された。最近は、薬やアルコール依存症の治療を受け、精神科の診療所に通っていたという。
バレロ容疑者は、2002年にプロデビュー。強打で知られたが、01年のバイク事故で脳出血した後遺症に苦しみ、その後、米ニューヨーク州コミッションの検査で脳に異常が認められた。04年にはライセンス停止処分となり、米国での試合はできなかった。
しかし、他の検査では異常が発見されず、再起を狙っていたところ、日本の帝拳プロモーションの目に留まり、契約。06年に世界ボクシング協会(WBA)スーパーフェザー級のチャンピオンのタイトルを獲得した。07年には、東京・有明コロシアムで王座初防衛戦も行った。
その後、世界ボクシング評議会(WBC)に転身し、今年2月には、ライト級で2度目の防衛に成功したが、次戦以降は重量が上のスーパーライト級で闘うとして、王座を返上していた。
交通事故から復活した栄光のチャンプが妻を刺殺、そして首つり自殺の衝撃。WBCのホセ・スライマン会長(78)は、今回の事件について「彼は非常に優れた選手。起こっていることは残念でならない」とコメントした。