右肩を痛めていても、虎が誇る大戦力であることに変わりはない。猛虎打線の命運を任せる。ベンチからニラミを効かせる金本が、虎の「期間限定神様」になる。
「(スタメン復帰は)どうなるか分からないけど、打つことに関しては問題ないからね。代打起用が増える? それはあると思う。代打での出場はあまりなくても、経験がものすごくある選手だから」
和田打撃コーチが、主砲への変わらぬ信頼を口にした。
金本は18日の横浜戦(横浜)で、自ら首脳陣にベンチスタートを申し出た。連続試合フルイニング出場の世界記録を1492試合でストップした。
当面は右肩の状態を見ながらの起用となる。スタメン出場の可能性もあるが、無理をしなければならないチーム状況ではない。もちろん右肩を完治させての“完全復活”がチームにとって最高の形だが、勝負ところでのひと振りに、大きな期待を寄せた。
金本自身が持つ勝利への強いこだわりも、大きな力だ。「これ以上出てもチームに迷惑をかけてしまう。特にピッチャーに」と自身の記録よりも、チームの勝利を優先させた男だからこそ、周囲に与える影響が大きい。
和田コーチは「相手からしたら、カネ(金本)が控えていることは絶対に嫌だと思う」と語気を強める。
投手に与えるプレッシャーは言うまでもない。登場時には球場の空気が変わり、打てばチームが猛然と勢いづく。ベンチスタートであっても、虎の“最高戦力”というわけだ。
虎の総帥の思いも同じだ。これまで幾度となく窮地を救い、打線をけん引してきた主砲に、改めて先導役を任せた。
「優勝するためには、もちろん金本さんに引っ張っていってもらわないと。それは言うまでもない。スタメン、ベンチスタートに関わらずね。とにかく早く右肩を治して、スタメンで出てきて欲しい」。電鉄本社で対応した坂井オーナーが、強い信頼感を改めて示した。
20日からは本拠地・甲子園での広島、中日の6連戦。超超満員のスタンドから送られる大歓声に包まれて、金本が打席に向かう。圧倒的な存在感と力を凝縮したひと振りが、チームを勝利へと導いていく(高瀬 悟嗣)