きょうのコラム「時鐘」 2010年4月20日

 アイスランドの火山噴火で「気象歴史学」が注目されている。1783年にも噴火したこの国の山は欧州に冷害をもたらし、フランス革命の遠因になったとの説が一例だ

影響は日本にまで及び、浅間山の大噴火と重なって天明の飢饉となり、やがて幕末の動乱を招いたという。天候不順だけで歴史が動くわけではないが、大災害が政情不安に結びつくのは間違いない

天明3(1783)年7月7日の浅間山大噴火は越中・加賀・能登にまで鳴り響いたと加賀藩史料にある。「空中鳴ることあり、雷にあらず地震にあらず」「天もうもうと曇り、雲密にして雨は降らず」「しかるに十日より大洪水」

噴煙の恐怖が生々しい。が、加賀藩では冷害と干ばつに強い農作物の研究に取り組んだ農学者もいた。人間は自然災害を抑え込めず混乱は避けられないが、そのたび逆境を超える人々を生んだ。フランス革命の後の欧州に産業革命が起こり、日本は明治維新で新時代が開けた

欧州の噴煙はロシアにまで来た。日本もひとごとではないが、今は18世紀ではない。21世紀の被害を最小にする知恵と工夫を見せたい。