【コラム】外交官選抜改革の行方に不安
最近、オーストラリアのラッド首相に対するインタビュー取材でキャンベラを訪れた。インタビュー前日に首相補佐官に会おうとしたが、オフィスには日本の新聞記者も来ていた。外務省から首相府に派遣されているという補佐官は、韓国語で「アンニョンハシムニカ(こんにちは)」とあいさつした。どこかで学んだ片言の韓国語で誠意を示しただけだと思ったが、実はそうではなかった。
補佐官との面談は3カ国語で進んだ。補佐官は日本の記者と韓国の記者がいずれも知っておかなければならない事柄には英語を使い、個別に話すべき事柄には韓国語と日本語を使った。彼は高校生の際に交換学生として日本に留学し、日本語を習得。さらに韓国で韓国語を学び、経済シンクタンクに勤務した経験もあった。中国語もできるという。言語の才能も大したものだが、アジアに対する理解水準の高さにも驚かされた。彼は20代前半にアジアでの自分の体験、アジアに対する愛情を生かそうと決心し、外交官の道を選んだという。話をすればするほど、資料や情報を通して頭で覚えたものではなく、実生活で積み重ねた専門性を備えていると感じた。
ラッド首相はインタビューで、「韓国語ができる補佐官を置いたのは、韓国に対する自分の関心を反映したものだ」と語った。確かにそうだ。外交官出身のラッド首相は、中国で中国語による演説を行うほど、中国語が流ちょうだ。こうした事柄は、オーストラリアが掲げる「アジア外交」が決して表面的なものではないことを物語っている。
一国の外交力を構成する人材の優秀性は、戦略家と地域専門家が左右する。特に実力ある地域専門家は、外交力の基礎となる。外交官が伝説のように語り継ぐ外交官出身の米政治学者ジョージ・ケナン氏の見識も、実は東欧、ソ連での勤務経験に裏打ちされている。現地の大学で学んだこともそうだが、彼がソ連の本質を読み解き、後の対ソ封じ込め政策推進で決定的な役割を果たしたのは、外交官として現場で会得した洞察力があったからだった。
韓国の外交官に戦略家や地域専門家がいるのかと尋ねれば、外交官自身も自信を持って答えられないはずだ。学識者らは「韓国の外交官は、国内で知られていない情報に他人より接することができるというだけで、専門性や戦略的思考を持っているかどうかは分からない」と指摘した。結局問題は外交官をどのように選抜し、どのように育成するかだ。
最近、政府の外交官補充選抜方式の改革案が関心を集めているのも、多くがそした問題点に同意しているからだ。ところが、大統領府(青瓦台)や外交通商部での論争を見ると、外交官の選抜方式自体には関心がなく、李明博(イ・ミョンバク)大統領がどんな意向を持っているかを解釈することに重点が置かれているようだ。「李大統領が望んでいるのは外務公務員試験をなくすことなのか」「外交専門大学院を通じた選抜が大統領の方針かどうか」といった具合だ。
そんな論争を見るにつけ、外交通商部には外交力を高めるために外交官の補充選抜方式を改革しようなどという考えはど全くないようだ。もしくは、改革を進める能力すらないようにも思える。「韓国の外交官は国際行事の準備要員を超える役割を果たせないのではないか」という話が出ていることを外交通商部は知るべきだ。
姜仁仙(カン・インソン)政治部次長待遇
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