【コラム】「4・19世代」による李承晩大統領の再評価(上)

 政治学者の崔章集(チェ・ジャンジプ)高麗大学名誉教授は最近、金禹昌(キム・ウチャン)梨花女子大学碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)と行った『4・19革命50周年記念対談』で、当時民衆デモにより下野した李承晩(イ・スンマン)大統領について、「これまで行き過ぎた批判を受けてきたのは事実」とわずかながらも擁護する発言を行った。これは、金教授が自由党の独裁について、「李承晩大統領個人の問題ではなく、態勢そのものの問題に起因していた」という趣旨で主張を展開した直後に出た言葉だ。

 進歩陣営の代表的な政治学者として知られる崔教授は、「内乱に匹敵するような混乱の中で大韓民国は建国し、北朝鮮との激しい対立状況にあった」と前置きした上で、「戦争を経て、そのような対立の中で治安と秩序を懸命に守るためには、“独裁はほぼ必然的なものだった”」と指摘する。最近のイラクやアフガニスタンなど、正常に秩序を守って法を適用することができない国では、民主主義を実現させることは非常に難しい。こうした世界の現状からも、韓国の当時の状況をうかがい知ることができるということだ。

 「これらの国々の最近の様子をみると、韓国の解放直後の状況が思い起こされる。われわれは今や、政治学も他国のケースについても学んだ。李承晩政権時代に国民は、民主主義に大きな期待を抱いていたかもしれないが、実際にこれを実現させるのは困難だったはずだ。今になって、このような時代背景についてようやく理解できるようになった」

 4・19革命当時、崔教授は高校3年生だった。デモに参加したいわゆる「4・19世代」では、一番若い年代に当たる。また当時、ソウル大学政治学科の3年生でデモに参加していたイ・ヨンイル氏も、「1960年代に新たに独立した国々では、民主主義の変質や歪曲(わいきょく)、憲法外政府の出現は珍しくなかった。また韓国でも、民主党政府を崩壊させた5・16革命以来、軍事独裁政権が25年間も続いた。こうした数々の歴史を振り返ると、李承晩大統領による反民主主義的な行為を絶対悪とばかりは断罪できないだろう」という趣旨の発言を、あるセミナーで行った。「4・19世代」も、50年が過ぎた今、李承晩政権時代について少し客観的に、余裕を持って見つめ始めたのだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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