裁判員裁判:強殺事件の被告に無期懲役判決 鳥取地裁

2010年3月2日 17時47分 更新:3月2日 22時6分

 鳥取県米子市の税理士事務所代表の男性ら2人が殺害された事件の裁判員裁判で、鳥取地裁は2日、強盗殺人罪などに問われた同事務所の元経理担当、影山博司被告(55)に対し、求刑通り無期懲役を言い渡した。小倉哲浩裁判長は「重大で悪質な事案だが、経緯には同情の余地が大きい」と述べた。

 判決によると、影山被告は昨年2月、事務所代表の石谷英夫さん(当時82歳)と同居の大森政子さん(同74歳)を石谷さんの自宅兼事務所で殺害してキャッシュカードなどを奪い、現金計約1200万円を引き出した。

 影山被告は公判で強盗目的を否定していたが、小倉裁判長は強盗殺人罪の成立を認定。ただ、「石谷さんが会社資金を自分のものとしていたため、被告が資金繰りに苦慮して個人的に借金を重ねざるを得なくなった。長年にわたり個人的な雑務にも従事させられていた」と指摘し、「命をもって罪を償わなければならない事案であるとまでは言えない」と判断した。弁護側は有期懲役刑を求めていたが、「大森さんまで殺害したことは許されず、減軽は考えられない」と述べた。

 弁護人の杉山尊生弁護士によると、影山被告は判決後、「積極的に控訴するつもりはない」と話したという。【宇多川はるか、遠藤浩二】

 ◇「涙を浮かべながら評議」裁判員

 判決後、裁判員2人が記者会見に応じ、「極刑についても有期刑についても涙を浮かべながら評議した」などと振り返った。

 30代の男性会社員の裁判員は、法定刑が死刑または無期懲役という重大事件の裁判員を務めた心境について「今でも複雑な気持ち。ちょっと、これは言葉で言えない」と話し、「終わって一安心した」とほっとした表情を見せた。

 もう1人の裁判員は法廷内で記したメモが約130枚に達したといい、「人の命の重さを考えてこの間を過ごした」と語った。判決文には「(事件を)虚心坦懐(たんかい)に検討」という表現があり、この裁判員は「裁判員の心中を察した一言だった」と評した。【武内彩、田中将隆】

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