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(愛知)イタセンパラの人工増殖に取り組む
日本淡水魚生態研究所長 小川茂徳さん 48

元々の自然を再現したい


 マニアによる密漁事件が発覚した天然記念物の淡水魚、イタセンパラ。小川さんは「マニアがこっそり川に入って、他人に売るほどイタセンパラを捕まえられるなんて」と耳を疑った。

 疑問の背景には、絶望的な生息状況がある。氷河期から生き残ってきたが、農薬に生存が脅かされて久しい。そこへ、繁殖力旺盛な外来種のタイリクバラタナゴが、産卵場所の二枚貝を先に押さえ、減少に拍車をかける。それでも細々と生き続けると、ブラックバスなどが根こそぎ捕食――。「自然界で今も本当に生き延びているのだろうか」

 30年前から12年間、計約1万匹を木曽川に放流してきたが、定着させることはできなかった。自然での生存を疑うゆえんだ。今では人工的に飼育し続けていくしか生存の道はない、と思い定めている。

 小川さんは環境省からイタセンパラの飼育許可を受けている。春日井市の自宅と一宮市、岐阜県各務原市の3か所で計約4000匹を飼育し、同市にある岐阜県世界淡水魚園水族館など公共の水族館2か所に贈っている。

 そんな小川さんが、自ら開発した水の浄化システムを生かして進めているのが「ビオトープ」だ。18年前、その言葉がない頃から手がけ、28か所を新たに造り、42か所をより自然に近い姿に改修した。現在は自宅の敷地に約200坪のビオトープを計画している。

 「この地域の元々の自然を再現したい。来る者は拒まずで開放しておいたら、どんな生き物が集まって来るのか、楽しみじゃないですか」。柔和な笑顔の奥には、「第2、第3のイタセンパラは見たくない」という決意が秘められている、と見た。

(榊原宗一)



 祖父の弟がミミズなどを研究した生物学者の和男。父・祝治はナマズやウナギの生態を探究した。3代目はイタセンパラのほか130種近くの淡水魚を飼育する。その中で、最も好きな魚は「金魚。人なつこさがかわいい」。8年前に研究所と土木業の万里技建工業を設立した。妻(41)と小中学生の子ども3人。春日井市神屋町。


2010年3月28日  読売新聞)
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