乗数効果も知らない菅財務相が、外国特派員協会で第2のケインズ革命を提唱した。彼が本当にそんな革命的な新理論を発見したのだとすれば、日本人として初のノーベル経済学賞は確実だろう。しかし残念ながら、その内容はロイターによれば、次のような意味不明の話だ:
「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える」というのは日本語として理解不可能だが、彼の理解していない乗数効果のことをいおうとしているのかもしれない。しかし最近の実証研究では、乗数効果は1以下だ。つまり増税額以下の所得しか創出されないので、税収も増えない。
ただし「増税によって不況になるとは限らない」と理解すれば、菅氏の意見は間違っていない。以前の記事でも書いたように「橋本政権の消費税増税で景気が悪化した」というのは嘘であり、逆に緊縮財政をとった小泉内閣のもとで景気は回復した。増税によって財政危機が是正され、経済が長期的によくなる見通しが出てくると投資が回復するという非ケインズ効果が80年代以降、欧州でみられるようになってきた。
菅氏の本音は「増税を議論すると選挙に負ける」ということだろうが、これも心配はいらない。たとえば読売新聞の世論調査でも、61%が「消費税率の引き上げはやむを得ない」と答えている。それより財源の裏づけもないバラマキ福祉への批判のほうがはるかに強い。菅氏がノーベル賞をもらうことは期待できないが、増税を議論する必要があるという彼の結論は正しい。
菅財務相は、日本経済の成長低迷とデフレ状況の原因は、過去の「土地を中心としたバブル(の発生)と崩壊が尾を引いている」と分析し、「第2のケインズ革命を起こすことで、この状況を打開できる」と指摘。「お金を循環させることがポイント」というのは、彼が自称エコノミストから吹き込まれたリフレ論のことかもしれないが、経済学で教えるように貨幣は中立であり、いくらお金だけ循環しても景気はよくならない。問題は日銀がお金をばらまくことではなく、投資水準を高めて実体経済を改善することだ。
具体的には「お金を循環させることがポイント」と述べ、「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える。日本にあるお金を循環させることで、日本の回復は十分に可能だ」との見解を示した。
さらに、「場合によっては、増税をしても景気は悪くならず、逆に使い道を間違わなければ景気はよくなるということを部下に検証させている」と発言。しかし、「(政治家は)増税すると選挙に負けるというトラウマがある。この問題を選挙の争点として語る限りは(実現できない)」と述べ、国会などの議論を通じて与野党が認識を共有することが不可欠と強調した。
「税による国民の分担をお願いし、雇用・仕事を創出して、そこからさらに税収が増える」というのは日本語として理解不可能だが、彼の理解していない乗数効果のことをいおうとしているのかもしれない。しかし最近の実証研究では、乗数効果は1以下だ。つまり増税額以下の所得しか創出されないので、税収も増えない。
ただし「増税によって不況になるとは限らない」と理解すれば、菅氏の意見は間違っていない。以前の記事でも書いたように「橋本政権の消費税増税で景気が悪化した」というのは嘘であり、逆に緊縮財政をとった小泉内閣のもとで景気は回復した。増税によって財政危機が是正され、経済が長期的によくなる見通しが出てくると投資が回復するという非ケインズ効果が80年代以降、欧州でみられるようになってきた。
菅氏の本音は「増税を議論すると選挙に負ける」ということだろうが、これも心配はいらない。たとえば読売新聞の世論調査でも、61%が「消費税率の引き上げはやむを得ない」と答えている。それより財源の裏づけもないバラマキ福祉への批判のほうがはるかに強い。菅氏がノーベル賞をもらうことは期待できないが、増税を議論する必要があるという彼の結論は正しい。
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コメント一覧
> 増税をしても景気は悪くならず、逆に使い道を間違わなければ景気はよくなる
つまり増税しなくても、金の使い道を間違わなければ景気はよくなる、ということですね。
金の使い道を間違わないというのは、今の政府官僚では不可能なので、単に間違った支出を少なくして少し効果があったのが小泉内閣・・・という見方も出来ます。
「場合によっては、増税をしても景気は悪くならず、逆に使い道を間違わなければ景気はよくなるということを部下に検証させている」
鳩山首相もですが、菅大臣も「全てが理論通り最高の効率で動作すれば上手く行く」という机上の空論に捕われているように思います。理工学部は出ていますが、実際に実験や開発などに携わったことがない人たちにありがちな発想ではないでしょうか。実験屋の端くれとしては「そんな何もかも理論通り上手く行く訳ないだろ・・・。ましてや人間の集団が。」と思わずにはいられません。
不測の事態に備えて何重にもエラー回避策を設けていた小惑星探査機「はやぶさ」の設計者達を見習って欲しいものです。鳩山首相や菅大臣みたいに完璧に上手くことが運んだときのことしか考えない人達が設計していたら、計画外のことが僅かでも起きたらすぐに計画が頓挫するでしょう。
>裏づけもないバラマキ福祉への批判
池田先生の言うとおりだと思う。
さらに乗数効果もさることながら、日本は資源が無いから外国から未来永劫(メタン抜きで)物を作る材料やエネルギーを買わないといけないのに。
サービス業サービス業、内需内需っていつ技術立国から資源立国になったんだろうか?
外国に対して商売で儲けなければ、ギリシャみたいなただの夢物語でいつかは破綻するだろうし、歴史上の覇権国家みればわかるが、先端技術こそが近道なのに。
老人に未来は無いから、目先の福祉を頑張りたいだろうけど、若者や子孫が可哀想すぎる。
増税はアメリカみたいに納めた税の何割かを、どのように使うか選択できるシステムなら少しは反発がなくなりそうな気がします。
サブプライムローンの破綻や中国経済の隆盛、政府に上に政府を作る大きな政府志向のユーロの存在を、新自由主義が失敗を総括し存在の説明ができなければ、批判の資格はないでしょう。
新自由主義の総括を自称経済シロウトの松岡正剛が行っているのに、池田さんはどうしちゃったの?。反論はないのでしょうか。早く、池田流総括が始まらないかと楽しみにしているのですが。経済学は寓話だ。は無しですよ。
消費税増税反対!預貯金課税にすべき!が、消費力が弱くて貯金の多いじいちゃんたちの都合に若者が付き合わされるわけですね。
シナリオ的には早い時期に消費税増税の道筋をつけて非難が出て鳩山首相が退陣、矛先は首相に向きつつ増税は着々と進む・・・。
公務員の給料も下がらなければ、国会議員の数も減らずツケだけは国民が払わされる。
菅さんの言い訳は謎すぎますね。しかし増税議論のきっかけを作ったという意味では結果的に正しいかも。
私は、「(増税して)〜雇用・仕事を創出して」の部分が非常に気になりました。
これって、増税で得たお金をプライマリーバランスの回復には使わずに、再びバラマキをするって事ですよね? ちゃんと選挙対策になっているじゃん(笑)
「非ケインズ効果」は知りませんでした。自分はフリードマンの恒常性所得期待仮説に基づいて、民主党のバラマキ政策が景気浮揚に効果がないと、自分のブログで指摘してきました。
景気回復には結局構造改革による財政再建(消費税増税)が必要であり、規制緩和、法人税の廃止(景気に左右される法人税は税収として当てに出来ない、それなら日本への外資の投資や企業に利益上げる事を優先させるインセンティブを与えるために)などを主張していました。
フリードマンはやはり正しかったのですね。
橋本内閣時代はアジア通貨危機や翌年のロシア通貨危機などで、世界中の景気が一気に冷えた時期です。
不運にも消費税増税をした時期であり、マスコミの報道によって橋本さんは魔女狩りにあったようなものです。
あれ以来、消費税を上げると景気が冷え込むと国民が思い込むようになった気がします。
冷静になって当時の世界情勢を見れば、景気後退は消費税のせいでないことは明らかなのですが、
情緒的な報道によって橋本さんは謝罪までする状況に追い込まれたのは気の毒でした。
菅氏の発言は内閣府参与の小野善康阪大教授の影響でしょう。
小野教授は乗数効果なんて存在しないと言われているのですから、乗数効果を知らないというよりはノーケアなんだと思います。
私も乗数効果なんてないと思います。
但し、何がしかのフローが発生するのは事実ですから、説明しきれていない部分もあるとは思います。
金持ちが使い切れない分から、数万円ホームレスに上げれば十中八九使うでしょうから。
ストックがフローに変わればよいというだけなんじゃないでしょうか?
つまり、消費性向を気にして再配分すればよいと思います。
小野教授の言われていることは、失業者は無駄、無駄な公共事業は失業手当と同じ、「役に立つ」ことをやれ、です。
「役に立つ」の私なりの解釈は、いわゆる費用便益分析、B/C>>1ということではないでしょうか?
乗数効果はないのですから、箱物も直接給付も公平に考えるべきで、要はB/Cが如何に大きいかでしょう。
例えばこども手当は、消費性向の高い層に厚く配分されますし、少子化対策として将来の現役の負担を大幅に軽減しますので、B/C>>1で実行する価値があります。
介護の充実も潜在需要を顕在化すると言えるので、B/C>>1でしょう。
「第2のケインズ革命」とは、そういうことではないでしょうか。
つまり、B/C>>1のことをやるのに財源は増税だろうが国債だろうが一緒ということかと。
菅直人、この人は国家による経済統制、つまり社会主義の計画経済をしようといっているんだと思うよ。本人は気づこうはずもないけど。
素人目でも酷い。
「使い道を間違わなければ」という裏には、民主党(あるいは自分)なら使い道は間違えない、という意識が透けて見えます。
しかし「部下に検証させている」というのは官僚に検証させているということだと思うので、結局、菅さんが官僚に使い道を考えさせることになりそうな気がするのですが....
先生の、08.12.31の本ブログでお書きになられた、ケインズの葬送、という記事を最近、偶然見つけて読んだ者としては、第二のケインズ革命という言葉は、斬新に思いました。
これまでの日本経済は、世界的な量的経済の成長路線でしたが、地球環境重視の今後は、質、量揃ったハイブリッド(複合)経済が、世界の先進的な潮流になるように思われます。便利、効率志向だけでなく、自然、ゆとり志向も同様に大切でしょう。デジタル全盛の時代に異議申し立てというのではなく、率直にアナログの価値を見直していただきたく存じます。私は昭和26年生まれですが、CDの音質に満足しない、あの自然音の濃密なレコードを懐かしむ私達の世代の声に耳を傾けていただければ、レベルアップしたレコード制作が、自然志向が増える近未来の社会においては次世代のイノベーションの一つに必ずなると思います。(耳→目→目と耳の共存)
だから、情報通信のネットワークでアメリカに先を越されても大丈夫。日本は、先の先まで読むのです。そのためにも、日本企業には細々としたアナログ技術の進化のための研究開発も続けていってもらい、デジタル主流のメジャーな儲けとは別に大原麗子的に、少し愛して長―く愛して、のようなマイナーな末広がりの志向で、世界中から日本のハイブリッド経済に称賛の声が徐々に広がっていくような技術開発のビジョンを今から作っていただきたいと思います。それが、第二のケインズ革命の内実の一つであったらと思います。
トヨタの今回の失敗も合理主義一辺倒で、無駄の効用、たとえば、ハンドルの操作上のゆとりの部分の存在等が大きな価値を生む源泉というエコの精神の欠如に起因すると思うのです。ユーザー情報という底辺の、利益に繋がらない声にもっと耳を傾けていれば、と。
「ムダなサービスを削減しても足りません、増税お願いします」
よりも、
「増税しても足りません、ムダなサービスを削減させて下さい」
のほうが、政治的にも通りやすいかもしれませんね。
個人的には穴の開いたバケツに水を注ぐなんて僅かでもイヤですけど。
労働資源活用のために貨幣資源を「循環させる」としても、競争下では労働資源と貨幣資源の価値最大化が課題になるので解決にはならない。そこで2つの資源の間にある投資機会(雇用、労働の機会)という資源の在り方が問われるが、その答え(2つの資源の関係)は時として変わるので「雇用・仕事を創出して」ということに直接関与するのであれば支持できない。「使い道を間違わなければ」とは間接支援のことを意味するのであれば、「雇用・仕事を創出して」という活動は国民一人一人が自立して考え解決すべき課題であるから、本質的に足りないのは(雇用や仕事ではなく)投資(雇用、労働)機会を国民一人一人が捕捉する力であるとし、それを育むために使うということであれば支持できる。
たとえば、支援対象者がある時点において様々な理由から就くことが困難な仕事を経験できるような制度を、徴収した税を用いて実現してはどうだろうか。仮に下は中学受験者だとしても簡単なプログラミングなどなら期待できる。指導力のある企業であれば人件費を抑えることが、制度利用者は労働(ボランティア活動)と引き換えに職業訓練(経験)が、それぞれ可能になる。大学(院)で「自身や社会に問題意識を持ち目的をもって学ぶ」ことは、仕事をする(貨幣、労働、投資機会という資源を最大化させる)うえで有意義だと思うが、そもそも「目的をもって学ぶ」ということに壁があり、全体としてはそうした学習機会(という資源)が十分に活かされていない。
使い道を間違わない、ある程度科学的な方法はあるのだと思いますよ。
何をすれば儲かるかという話しじゃなく、社会と産業の構造の問題に絞ればですけど。
社会構造と産業構造を比べた時、大きな問題から優先してやっていくのは当然でしょう。
少子高齢化、一次産業の衰退、地方の疲弊、不安定雇用…
どっちにしろ、やらなければいけない問題です。
それらの問題の解決策を議論します。
そして、抽出された解決策をいくつもシミュレーションします。
今はコンピュータによるシミュレーション技術はかなり進歩しています。
逆に、そういったシミュレーション技術にお金を掛けても良い。
シミュレーションの結果から効果の高い=B/Cの大きい解決策を実行して行けばよいのでしょう。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20080125/145415/
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20060704/105692/
乗数効果はないという話しですが。
穴掘って埋めるの話しで恐縮ですが、そういう公共事業を実施した場合、給料として労働者に配る場合と、同額を給付金として配る場合と乗数が違うというのは明らかにおかしいでしょう。
効果は同じはずです。
X/(1-β)という式では説明ができないということでしょう。
国民会計の計算式では公共事業の乗数は1で給付の乗数は0です。
配分方法の呼び方を変えるだけで効果が違うなんて、ナンセンスでしょう。
そもそも、世の中には非ケインズ効果しかないのではないでしょうか?
部下にこれから検討させるといって、部下から逆に指示されて自分なりの理解で発言してるのがみえみえですね。それでも現実路線でなにかやろうとするだけ某総理よりましですし、激しく暴走しないだけ某金融相よりはましです。党内では、仙谷さんと組んでもう少し影響力を発揮してもらいたいと思ってますが、それは先の話になりますかね。
そもそも少子化って悪なんでしょうかね。
世界が不安定で、経済も問題だが、もっと本質的な環境、食糧、水、エネルギーの問題があります。
それを考えると生まない選択もそれはそれでむしろ自然なことだと思うのですが。
戦後の日本がむしろエネルギー(石油)バブルによる人口バブルで異常だったと思います。そのバブルを基準に無理に維持しようとして頑張るのはいいですが、それが最後まで続かないなら結果は同じです。
その分のお金を"便利(通信やリニアとか)"や"不安材料(ダムとかメタンとか)"に投資した方がよっぽど子孫の為になると思います。
過度の人口調整は、中国が行っている一人っ子政策のように、いつか歪みが自分たちに返ってくるものです。
江戸時代の水準を下回ったりしたら考えものですが、自然のものはある程度自然に任せ、少子化社会という選択を受け入れ、その未来を見据えた社会つくりに梶きりを行って欲しいです。