月刊 現代農業
ルーラルネットへ ルーラル電子図書館 食と農 学習の広場 田舎の本屋さん

藤山富二夫さん
藤山富二夫さん。4種類の山菜(ウド、ウルイ、ミツバ、タラの芽)を4月いっぱいまでセット販売。山菜詰め合わせボックスには、食べ方のレシピも添える。2000〜5000円の予算に合わせて注文を受ける

ひと足早く春の香りを

伏せ込み栽培の山菜セット

山形県真室川町・藤山富二夫さん

 春先、野山で採った山菜を酢味噌和えやお浸し、天ぷらなどでいただくと、春の精気を食べたようで身も心もリフレッシュします。山形県最上郡真室川町の藤山富二夫さんのハウスにお邪魔すると、まわりはまだ雪で覆われていますが、そのなかには、ウド、ウルイ、ミツバ、タラの芽と四種類の山菜の春の精気が満ち溢れています。

 藤山さんが山菜栽培を始めたのは今から20年ほど前、出稼ぎをしなくても冬場の収入をということで山菜の伏せ込み促成栽培を始めたのでした。経費を極力かけないようにと、豊富な湧き水が利用でき、防風雪林に囲まれた場所にハウスを建てました。

 一般的な伏せ込み促成栽培は、地中に電熱線を埋設して地温を15〜20度にして栽培します。30m足らずの4棟のハウスの伏せ床を電熱線で加温するとなると毎月5万円ほどの電気代がかかってしまいます。そこで藤山さんは薪ボイラーを自分で設計し、知り合いの鉄工所に、なんと30万円でつくってもらったのでした。現在は、二代目の薪ボイラーを使って温水を伏せ床の下に通しています。

伏せ込んだ真っ白なウルイ 「雪うるい」の収穫は暗やみの中で
ウルイの根株を並べる
天地を間違えないように確認しながらウルイの根株を並べる。芽の部分の泥を洗い流してから温度をかけて伏せ込みを開始
伏せ込んだ真っ白なウルイ。アクがなく、生でも食べられるのが売りの「雪うるい」にするために完全遮光して栽培 太陽光線が当たると葉が緑になるので「雪うるい」の収穫は暗やみの中でヘッドライトを使って行なう
秋に掘り取ったウルイの根株は外に野積みしておき、順次伏せ込み床に運んでいく 2年養成したウルイの根株
秋に掘り取ったウルイの根株は外に野積みしておき、順次伏せ込み床に運んでいく 2年養成したウルイの根株。左は貯蔵養分を十分に貯めることができなかったもの。芽の大きさや芽数がまるで違う。当然収量にも影響する。夏場の株養成がとても大事

 一昔前は「あの山菜もこの山菜も都会の人に食べさせたい」と今は栽培を休止したワサビ、ミズ、ミョウガタケなども加え、7種類の山菜をつくっていました。調理法も書き添えて「山菜詰め合わせ」として販売していましたが、やはり認知度が低く、結局今の四種類になってしまったそうです。

 いろいろな山菜を大々的に宣伝して認知度を上げれば、まだまだ商材になるものがたくさんあるはずと藤山さんはいいます。ワサビ、ミョウガタケ、ミズ、シドケ、アイコ、コゴミ……。ちなみに藤山さんがいちばん世に広めたい山菜は、アスパラのような味がするアマドコロだそうです。

収穫直前のウド
収穫直前のウド。2年養成した根株からは、極太の2Lサイズがとれる
ウドの伏せ込みベッドには落ち葉を敷きつめる
ウドの伏せ込みベッドには落ち葉を敷きつめる。ふつうはモミガラなどを入れて軟白化させるが、落ち葉だと株元までスッと手が入るので収穫しやすい

**

検索語「山菜 伏せ込み 栽培」でルーラル電子図書館(「現代農業」)を検索
検索式:  

 ひと足早く春の香りを届ける山菜の伏せ込み促成栽培は、1月中旬から4月いっぱい収穫しますが、勝負は夏場の株養成。しかし、藤山さんは原木ナメコ栽培で1tほど出荷するナメコ栽培農家でもあります。年間3万〜4万個の植菌もしなきゃならないし、夏ネギも45a栽培しているので、夏場はとても忙しいのです。冬の伏せ込み用山菜の株養成はミツバ10a、ウルイ20a、ウド60a、そしてタラの芽が40aと面積もあるので大変です。

 夏場にしっかり株養成するためには、養成株の株間を広くとり、株元まで十分に直射日光を入れること。そうして育てながら貯蔵養分を十分蓄えた健康な根株をつくることが大事だと藤山さんは強調します。秋に根株を掘り取るとき、その冬の収量がわかってしまうのだそうです。

「夏場の山菜の株養成がうまくいかないとこうなる」と、伏せ込みして収穫したミツバと、これから伏せ込むウルイの根株を見せてくれました。貯蔵養分をしっかり蓄えた太い根のミツバと、細い根のミツバでは、左ページの写真でもわかるとおり、出てくる新葉の大きさがまるで違います。

藤山さんご自慢の薪ボイラー
藤山さんご自慢の薪ボイラー。これで伏せ込み床を暖める湯を沸かす。収穫が済んだタラの木も燃料にする
タラの芽の伏せ床
タラの芽の伏せ床。伏せ込むとき、切り口を3回ほどきれいに洗わないとカビが生えてくる

 藤山さんはウルイとウドはこだわって、株養成を2年するのですが、株養成がうまくいったウルイは、伏せ込む段階であきらかに芽の大きさと芽数が違います。また、2年養成して充実したウドの根株からは、極太の2lクラスが収穫できるのです。

 藤山さんの山菜つくりのこだわりは近所でも評判。お土産やお使いものに地元の人たちが使ってくれるなかで、口コミで年々顧客も増えているのだそうです。

根株が充実したミツバとそうでない根株
根株が充実したミツバと、そうでない根株では、茎葉がこれほど違う
ミツバの収穫
ミツバの収穫。充実した根株から伸びる茎葉は30cm以上に。香りが高い根つきの「根みつば」として出荷

「田舎の本屋さん」のおすすめ本

 山菜栽培全科』大沢章

”採る山菜から作る山菜へ”需要も多く将来性のある53種を選び、特徴、利用の仕方、栽培と消費の動向、とり入れ方、栽培の実際、売り方を解説。むらの特産つくりにも役立つ1冊。 [本を詳しく見る]

田舎の本屋さん 

「山菜」の他の記事を読む

 呼吸器系の弱い人にフキノトウ
現代農業2007年3月号

そろそろフキノトウの便りが聞こえてきます。本当は、よく探せば12月頃から葉柄のつけ根に小さいつぼみがついていることもありますが、やはり大きく生長してふくらんだものは今が旬です...[記事詳細]

月刊現代農業 

もどる

ページのトップへ


お問い合わせはrural@mail.ruralnet.or.jp まで
事務局:社団法人 農山漁村文化協会
〒107-8668 東京都港区赤坂7-6-1

2009 Rural Culture Association (c)
All Rights Reserved